2014-01-22

1月22日 Laird is BACK!

(Yuri Soledade,バックサイドアタック。以前はプロサーファーとして大会にも出ていたらしいブラジリアン、マウイで最も人気のあるレストラン、パイアフィッシュマーケットの共同オーナーでもあり、ハイクにできた新しい注目のレストランNUKAの経営にも忙しいはずなのに、カイ・レニーやイアン・ゲンティルの大会に関するコーチもこなし、家族を大事にするファミリーマンでもある、パドルでのジョーズを最も初期の頃からやっていたクレージーブラジリアングループの一人でもある。すべての事に最もバランスが取れているビッグウエイブサーファー、スーパーナイスガイの一人だと思う。金曜日に日本からきたサーファーがなかなか見つからなかったとき、無線で聞いて真っ先にジェットに乗って探してくれた人でもある)
ここ数年巨大なうねりが来ていなかったハワイ、このうねりは久々にパドルでは無理でトウインでしか乗る事は無理なくらいの大きさなのではという前評判、なんだかマウイでは合い言葉のように皆がWednesdayというと何の事を言ってるかわかるくらい水曜日に巨大な波が来る事が話題になっていた。これで、パドルインサーフィンをする人がいるのか、久々にジョーズでトウインできる事でトウイン好きな人は喜んでいるのか、ただ風の向きが理想的にならないかもしれないという懸念はあった。

起きて海をチェックしてみると思いのほかサイズアップしていない。オアフはすでに大きくなっていて、まだピークが来てないはずなのに波がくるたびにハレイワハーバーは冠水しているらしい。ピアワンには二人サーファーがいたけれど波はあまり割れていない。ただし、二人がいる場所はいつもよりずっと沖なのでもしかしたらたまに大きなのがくるのかもしれないが。風は朝まで吹いていた強いコナウインドが雨とともにやみ、落ち着いている。なんだか嵐の前の静けさみたいで不気味。
この日の様子はこちらこちら

 (こちらもユーリ、今日はすごい波に乗れて、家族の元に無事に帰る事ができて嬉しい、とコメントしていた)

なんて言ってるうちに見る間に上がってきた。
なんとポイントブレイク2という映画(昔ポイントブレイクというキアヌ・リーブスとパトリク・スエイジーのサーフィンを舞台にした映画を見た人も多いはず、当時のトッププロサーファーもたくさんエキストラや脇役で出ていて結構笑える)の撮影でジョーズはアメリカの軍のヘリやらジェットスキーやら大騒ぎのようだ。1作目ではクライマックスで主役が巻かれるところのスタントをわたしの師匠であるデレク・ドーナーがやった。90年代前半当時ビッグウエイブでは一番とされていた彼はやはり当時一番すごい波とされていたワイメアで6回のテイク、つまりわざと6回もワイメアの波でワイプアウトして撮影したのだ。最後に波のフェイスをバウンスしながら落ちていき、そのうえからリップがドサーっと落ちてきた感じで、OKがやっと出たという話を聞いた。ギャラが300万だったか600万だったかわすれちゃったけど。

波はあるけど風がオンショアなのでジョーズはグッドコンディションにはほど遠い中ヘビーで巨大な波をユーリがトウインで乗り、それがビラボンのXLLのコンテストサイトに送られ、もう2時間後にはウエブサイトに乗っている。ジェイソンポラカウがジェットからFacebookにジョーズのコンディションの写真を送って実況中継とまあ、最近のソ−シャルメディアはここまできたかというかんじ。何しろこのXLLも撮ったそばから送らないと誰かに先を越されるため、みんなビーチから送ってるようで、家に帰って編集する暇なんてない。
(フランシスコ・ポルチェア、ウインドサーフィンでもクレージーなアタックを見せていたけど最近はサーフィンの方が知られている)
時代はほんとに変わったものだ。何ヶ月か先に雑誌が出るまでは何も見れなかったり、波情報もなし、携帯で情報を交換すらできなかったのはちょっと前の事なのに。

でも今日の波を見て、思い出した、ここ数年こういう波が来ていなかったけど、こういう波でみんなトウインしていたのだ。パドルサーフィンが始まって、トウインをばかにするような風潮が強かったけれど、この波にパドルインはとても無理(今のところは)だろうし、実際こんなアグリーでハードな大波でパドルで出ようとする人は一人もいなかった。きれいにラインナップしていたら出たかもしれない、でも危険が多すぎた。今日の海は怒り狂ってる荒々しい海、人の迎え入れるという雰囲気ではなく拒絶し、押しつぶすような印象がある.その上雨だったし。
でもトウインの連中はその恐ろしい波に恐ろしいスピードで乗っていた,あれはあれでやはりものすごい波のパワーを感じる、ものすごい経験だろう。
マウイのマッドマン、フランシスコ、ユーリはふたりともバックサイドでとんでもない水野良の巨大なチューブライドをみせていた。

そしてとっても嬉しい事にレアードが戻ってきた。
カウアイに引っ越すという時もうジョーズがあまりに混みすぎて見切ったのかと寂しい気持ちだったけれど、そのとき「本当に大きくなったとき、この波に乗りたいと思うような日にはカウアイにいたって間に合うんだ、カウアイに波がヒットしてからこれはマウイでいいぞって思えば飛行機に乗ってくればそのうねりがマウイに届く前に来れる、だからジョーズに乗らないというわけではない、ただ毎回混雑している中イライラするつもりはない」と言っていたのを思い出す。なんと5年ぶりのジョーズだそうで、ほんとに大きい波が来たらやっぱり戻ってきてくれた、昔からのパートナー、デイブ・カラマと一緒にジョーズに出ていた、心から嬉しかった。
わたしは彼らがまだトウインを始める前からジョーズに挑戦し始めた頃(まずはウインドサーフィンで乗り、その後ゴムボートで引っ張りながらトウインが始まった)毎日のようにその様子を聞かせてもらっていた。ストラップクルーと呼ばれるその7、8人の仲間達のR&Dはある意味命がかかってる(ようにわたしには思えた)トライアルアンンドエラーの繰り返しでそんななかでトウインが確立されていったのだ。そんな彼らを見て育った事が今わたしに大きな影響を与えてきたのは言うまでもない。自分が乗れないながらにも彼らの話す事を自分のレベルにまで噛み砕き、自分なりにやるべき事、海との向かい合い方を考え、彼らの教えを適応させようとしているつもりだ。
レアードやトウインの事をばかにしたり、バッシングする人、面白おかしく言う人も多い、でもわたしは彼やカラマ達から本当に多くの事を学び、そして今でもその教えが必要な時にいつでも頭に浮かんでくるほどたくさんの事を示してもらった。その彼らが混雑のない巨大なそして恐ろしいジョーズの海で嬉しそうに楽しんでいるのはright people in righht place という感じで感動的だ。
今日一番の波にテイクオフし、どこにも行くところがなくまっすぐ行かなくてはならず、ものすごい料の水の壁がスーパーサイズのブルドーザーが蟻のようにちいさくみえるレアードを押しつぶしていくようなワイプアウトについてレアードは『あれはかなりやられたよ、古びた熊のぬいぐるみを引きちぎろうとするピットブルって感じだったね.はっきり言っておくけどボクはあの波はメイクしていない、だから、いくらめっちゃくちゃ大きな波に乗ったとはいえあれは失敗リストに入れられるし,自慢にできないライドだよ」

レアードが昔言っていた。初期のジョーズはほんとに愛に満ちていた。海への深い畏敬の念、そしてその場とその特別な時間をシェアし、命を預けられる信頼を共有している仲間との固い繋がり。言葉がなくても相手と意思の疎通ができるくらいお互いをわかりあっている心地よさ。それが命をかけるほどの場所なのに、全く知らない人、挨拶もないような人がそこに来て意志の疎通もないから危なくなる。そうこうしているうちにサーカスみたいになってきて普通のサーフィンで6ftの波にも乗れない人がトウインではいってくるようになってしまった。でも今でも多分人が少ないとき、ぎりぎりの限界の大きな日で一握りの人しかはいってない時はその雰囲気があるはずだ。

トウインがポピュラーになったとき、レアード達が大事な場所がレイプされている気分だったという感覚をもしかしたら今パドルでジョーズにはいりだした最初の頃のメンバーは感じているかもしれない。でももうそれはどうする事もできないわけでそれをイライラするのではなく、やはりコミュニケーションをとる事、そしてビジターはビジターとしてのリスペクトを、ローカルはローカルとしての責任とアロハでいろいろ教えてあげたり注意しながら相互のリスペクトの中でチャージできたら最高だ。
こんな特別なところに入れるというほんとに世界で一握りのスペシャリストとしての仲間と知り合いになれ、自分のパッションを理解し、共有してくれる人とともに人生のハイライトを経験できる特権を多いにエンジョイしてほしいなと思う、だってあんな事普通の人はできないんだから。私達には想像すらできないような世界が見えているはずなのだ。
サーフィンは社会の縮図であって、ジョーズの世界はそれの究極だと思う。



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