2014-12-23

12月23日 追記ジョーズ,どんな海でもはいれば学ぶ事は多い

(普通だったら絶対にはいらないコンディションのピアヒ。でも事故や怪我さえなければこんな海でも入る事で学ぶ事は沢山あっただろう,rider: Shinpei Horiguchi photo by Ryota)
お昼前まで大雨の中、町で皆とおしゃべり,その後真平君と篤君はジョーズを見に行った。おそらく車では最後まで行けないよ,と言うと,車を止めてウエット来て歩いていく,と言うので,それはいい考えだと思った。せっかくマウイまで来たのだからやはり見るだけでも見ておきたいだろうし,見る事で少しでも実感がわくだろうし,次ぎにくる時への準備になるからだ。それにしても一年で一番凄い雨が降ってるような日にわざわざ来たから二人も自虐的に笑っていた。
(私は一緒に行かなかったので写真はすべてまさお君Ryota君のものを拝借)
ハイウエイから歩いたら40分くらいかかる道を雨の仲ウエットを来て歩いていくつもりで向かったが,ラッキーにも道はそこまでぬかるんでなかったらしく,崖の縁まで行けたらしい。そこで海をチェック。まあ予想通り,まっ茶色の海,そしてオンショアでぐちゃぐちゃの海面。普通だったら出るなんて考えもしないような様相だったはず。
でもマウイ島にやってくるまでにもいろんな葛藤や迷いがあったため,ここまで来てただ見て帰るだけでは気持ちがすまなかったようだ。ずっと見て,波に乗る事より海に入ってどんな感じか実感したかったのかもしれない。わざわざ出る前に『こんな海にはいったらあとでローカルに文句言われますか?』気遣う電話もくれた。確かにこんな海に出るのは無謀だし,何があってもおかしくない場所と波なので,実際に何かあったら,こんな時に出て無謀だと非難されるだろう。そういう事ももちろん二人は了解の上で,出来るだけそのリスクを減らしたやり方で海にはいろう、そしてそれが自分たちにはある程度は出来るだろうと判断しての決断だと私は思っている。
結局二人は雨ザーザー降りのオンショア(調べると強い時は12メートルくらいまで風が上がっている時もあった)
普段ほとんど水のない谷からは、轟々と濁流が海に流れててものすごい流れを作り,それが海に茶色い帯のように沖に向かっている。
波の質ボッコボコ,そしてどこで割れるかの予想もあまりつかない感じでいろんなところで割れる(実際3つのうねりが同時に来ていて風波9セコンド9フィートというのもあった)そしていつも以上にハードなショアブレイクを必死で抜けてアウトに二人でパドルアウト。
結局二人とも5本ずつくらい乗り、レフトの波にも乗り(レフトに行ってはまると危険だからジェットもいないしそっちに行くつもりなかったが、乗ったらレフトに行かされたというのが二人の談)巻かれもしたがしっかり無事にもどってきた。
去年に経験を参考にしてYUに削ってもらったジョーズ用のボードで乗る篤君
あとでどうだったと聞くと『一言サバイバルでした』と表現した篤君,まずジェットもいない,まわりに人はいない,二人っきりであの荒れた海に出るのはサイズがあってもクリーンなコンディションで多くの人が見守るなか出る時より,覚悟がいるのは確かだし,サイズがないとはいえ,15フィート近いクリーンでないセットが襲ってくるのだ。クリーンな波より怖い。
私レベルに噛み砕いて考えれば例えば自分のスキルでギリギリ乗れる波の場所にはクリーンで完璧な時しか出たくない,オンショアやオフショアがきついとき,ストーミーな波のときなんてもってのほか,頭くらいの波だってオンショアでどかんどかん来たらいやニなる。そういう意味でこのピアヒでこのコンディションに出るのは無謀と勇敢さが紙一重でもあり,二人も真剣だったと思う。
実際海から上がってきた二人の表情は朝とは全く違う晴れやかなもので素晴らしかった。今日出た事が本当に意味があり,いい経験だったのだと一目で分かる表情だったし,私も嬉しかった。
篤君があとでメッセージをくれた。
「本当ならやらないコンディションなのもわかっている,でも自分たちに撮って凄い良い経験値をもらえました,海を感じる事が出来ました,普段は風もなく,ローカルサーファーがいて,ジェットも有り!そんな時には感じられないところを感じる事が出来た,スケールの広さなんか言葉には表せないものを得られました。」

でもただ無茶して出たわけではなく,すべての事を考えたうえで二人で助け合っていけると判断し出たわけで,彼らが普段のピアヒだったら波に乗れる事は私は100%確信していたから,出たい気持ちもよくわかった。見るだけで帰るのと,波に乗れなくても実際海に出たのでは大違いだと思うからだ。

 (帰りはお約束のスタック,1時間ほど奮闘したらしいけど結局ローカルの人に引っ張ってだしてもらったらしい,去年もやってその時はタイヤパンクさせたままハイウエイまで出てきた)

暗くなる頃無事にすべて終わったという連絡をくれ,飛行機に乗るまでの短い時間に皆でタイ料理でお祝い。朝食べただけで何も食べずに一日中海に板ので皆お腹へコペコだったに違いない。今回も大慌てで飛行機に乗り日帰で帰っていった篤君。そして何年も来る事を考えていたはずの真平君もやっと機が熟したようにやってきて,意味のある一日を過ごせた。私もビデオを撮ったまさお君,クルーに同行して写真を撮ったリョウタ君、メグちゃん,アリスも皆二人の波と向き合う姿にたくさんの感動をもらい,きっとそれぞれが自分と波との関係を彼らの姿に重ねながら自分なりに考えさせられたと思う。

真平君は日本のサーファーのなかでも特に有名だし人気もあるから、ある意味芸能人的存在でもある。だからこそ,「ジョーズはいつやるのだ」と良くいろんな人にきかれたりもしていたらしい。それに来たからには見るだけではなくちゃんと乗らないと,という気持ちもあって,それがプレッシャーになっていたと素直に語っていた。でもビッグウエイブサーファーだからこそ軽い気持ちで乗れる場所ではない事もわかっていただろう。だから何となく,そのタイミングがつかめないまま今まで来る事もなかった。でもピアヒの事を考えていなかったわけではないはずで、去年篤君達が乗った時はちょっとやられたって思ったんじゃないだろうか。

篤君も去年以来また来たいと言う気持ちはあって何度か連絡したり波チェックのメッセージが来ていたけどやはり一人で来るにはリスクが大きすぎるし,プライベートでもいろいろ忙しく,離島の波に完全にフォーカスできるだけの余裕がなかったのかもしれない。 
二人とも今年はいつもより波乗りが出来てなかったと言っていて,それもジョーズと向き合うための気持ちのうえでちょっと躊躇させる要因だったのかもしれない。いろんな要素をすべて整えてジョーズが割れた時にぴったり合わせてくるって言うのは簡単な事のようで結構難しい事なのだと思う。
そういういろんな要素に金銭面や時間の問題も絡み合って,行きたい、乗りたい,怖い、行かなくちゃ、といろんな思いがあったと思うけど,やはりまずは実際来た事で気持ちがすっきりしたようだ。
雨にも関わらず,これ以上ひどい天気はないという日に来てしまったにもかかわらず表情は明るかった。
帰ってからくれた篤君のメッセージにこんな事が書いてあった。
「怪我をする時なんで怪我をするか,昨日ジョーズではいろいろ考えさせられました。例えばリーシュが切れて板がなくなったらどっちに言ってあそこの岩なら上がれそうだとか,レフト行くとあそこに岩が有るとか,レフトでリーシュ切れたらあの棚から上がれる,昨日はほんとにいろいろマーキングできた日でした,たくさんのローカルがいたらあんなにうろうろ動き回る事も気にして出来ないし。塩の流れ矢いろいろ感じる事が出来ました。昨日みたいなショアブレイクの時ははいる場所の岩も違うし,ととにかくいろいロ,波に乗るために必要な知識を人から聞くのではなく自分たちで得る事が出来ました,でもマウイは最高です!」
そして次に何を準備すればいいのか,次はどうしたいのかも,きっと見えたに違いないと思う,今回一回きりで終わらない二人なのは私にはわかる。
ローカル達がやってる事,皆と同じ動きをしていたのではいつまでたってもその差が縮まらない。だから人がやらないようなやり方をするのも時には必要だと思う。実際ローカル達も誰も出ていないような小さめの,割れるかわれないかのジョーズや風が順々吹いている仲,知る人なくこっそり来てジョーズの波に乗ってるようなアンダーグラウンドサーファー達も結構いるし,誰も来ないけど練習できるそんなコンディションも結構あるのだ。焦る必要もないから二人のペースでじっくりでも着実にジョーズの波と付き合い、その姿を見る事で私達もいろいろ学ばさせてもらえたら最高だなと思っている。

サーフィンというのはいろんな意味で人生の縮図であると思う,特に波が大きければ,そして大きな自然のなかにぽつんと自分をおいた場合はその感覚が強くなる。ピアヒで二人きりで(彼ら曰く、海に出るとそこから見える人工物は崖の上にぽつんと止まっている彼らの車だけだったらしい,オアフでもそんな経験はした事がない,と言っていた)あの怒り狂ったような海の中に身をおいて何を思ったのだろう?
素晴らしい波を乗る事,メイクするとももちろんだけれどその波に乗ろうとするまでの過程、心の旅こそが,サーファーにとっての一番の財産で自分を高めていくための大事な部分なのではないかナ。だから今回あんなジャンクな海でもはいった事によって、いい波でカメラマンやジェットがまわりにいる海では決して得られないようなものをつかめたと本気でストークしていた二人の気持ち,何となくわかる気がする。そしてそういう気持ちで海にはいった二人,カメラとか関係無しに波と対峙するためにはいった二人をカッコいいと思う。(心の片隅にはもし万が一何かあったら,という不安は最後まであったけれど)

偶然にも二人とも今年赤ちゃんが生まれたばかり、お父さんになったばかりでもある。
二人がどんな思いで海に向かったのかまたゆっくり話を聞く機会があるといいなと思う。そして今回の彼らのマウイ訪問がこのシーズンの始まりであって,これからさらに展開していってほしい。Slowly but surely, ゆっくりでいいから確実にジョーズの波をものにしていってくれるといいなと同じ日本人として嬉しい期待に胸が膨らんでいる。

No comments:

Post a Comment