2013-08-27

8月27日 東北にて

草のにおいと涼しい気温でウイリーもテンションが上がっている。

 夕方福島に着くはずが夜遅くになってしまった。今度こそ,東北の横乗りシーンの兄貴分であり,復興に向けて多方面に渡って活躍,活動している平さんに会えると思っていたのに残念ながら行きがけに寄ることが出来なかった。かえりにあえることを期待して先に進む。眠いのを頑張ってやっと宮城に辿り着いたのは夜中だった。そのままとにかくテントだけ張りバタンキュー。
朝まず最初に気がついたのはみどりのにおい、雨が降り,雷も鳴っていたのでさらに草のにおいが強くなったのかもしれない。なんだか湘南のあの暑さがウソみたいに涼しい。

起きてのんびりしているとテントをはらせてもらった場所のオーナー金野サンがコーヒーを持って出てきた。
あー、サニーデイ,ここに来ると本当にたくさんの思い出がよみがえる。大変な時期で辛いこともたくさんあった時期だったけど,でも素晴らしい仲間と知り合い,一緒に力を会わせた素晴らしい時間だった。今や家族と言えるほど親しくなったオータムともここで偶然が重なってであったのだった。ここに来るとどんなに忙しい人でも時間の流れがゆっくりになり,『ま、いっか』っていう気分になって呼吸がスローになる感覚を覚える。
サニーデイで癒されに来る人は東北の見ながら千葉や湘南からもいるらしい。家に戻ってきたようななつかしい気持ちにさせられる。
2年前にマナちゃんの命が始まったポイント(オータムのテントがあった場所)にテントをはらせてもらったのだが,ちゃんとマナちゃんポイント,そして彼女が生まれた日付まで書いてある看板があった。そのうちこだからを授かるための神社でも作られたりして。

少しゆっくりしたあと金野さんと一緒に近くのサーフポイントへ。ここはつい最近一ヶ月ほど前に砂がたまり始めてブレイクし始めたそうだ
南三陸の兄貴分サーファー佐藤サン。3代目の漁師でもあり、昔から原発反対などの意志をはっきり示して署名運動なども頑張っていたらしい。

『さあ,ウイリーも東北に来た記念にいくよ!」
『別に僕はビーチでゴロゴロしてるだけでいいんだけどなー』と言う表情。
たまにいい波も来るけどウイリーと一緒なので巻かれるわけにはいかない。
「行くよ、ウイリー、だいじょうだから,私を信じて」
「ひえー、こわいよー」
『ここまできたらコミットするしかない!Hang on willie!」
かなりのスピードが出たけど私もウイリーに怖い思いをさせてはならないと落ちないように気合いをいれた。ばっちり乗れたけど最後の最後岸が近くなったところでウイリーがここまできたらビーチまで泳げると思ったのか耐えきれずに海水に飛び込んだ。それからあわてて泳いでいるので私も降りてウイリーを抱きかかえながら波が来た時巻かれないようにサポート,ビーチに帰ってからしばらくは『なんであんなことさせるんだヨーン』とでもいうように目を会わせてくれなかった。ごめんね,ウイリー。いつかこの楽しさをわかってくれるようになりますように。
何はともあれ,以前見渡す限り瓦礫の山だったこの場所をはじめてみたときのショックはとても言葉には表せないものだった。私も一平君も皆と一緒に海に入り,波をシェアさせてもらえたことに心から感謝。忙しい中せめて一年に一度は訪れることであのときのことそしてこれからのことを忘れないようにしようと再確認しあえた。2年半前のあの強い気持ちはなかなかそのまま保つのは難しいけれど,まだまだこ子ではいろんなことが起こっていて,その重荷をここに住む人だけに落ち着けたままにしておくのは良くない,そう心から思う。
この場所は今宮城北で波がブレイクする数少ないポイントであり,とても大切な場所。
もともとパタゴニア仙台のスタッフだった笠原君、震災直前にこちらに引っ越してきて少ない若手代表として復興に頑張っている。
 レベルもとても高く,皆がルールを守ってとてもいい雰囲気で乗っているのでもしもいく人がいれば必ず地元の人に一声挨拶して混雑していないときを見計らって入ってください。
実はこの場所も防潮堤建設の計画が進み、なんと東北の海岸線の中でも最も巨大な高さ14.7m、奥行き(台形の山のように広がった形をしたものなので)91メートルと言うとんでもないものが出来ることになっている。そんなことをしたらもちろん砂浜も何もなくなるし,川縁にも7mの高さの壁,とにかく牢獄に閉じ込められているような光景になるだろう。お隣にある日本有数のクラシックポイントだってもう終わりになってしまう。
大谷海岸の防潮堤建設をストップしようと必死に頑張っている三浦さんも忙しい中会いにきてくれた。
ちなみにその大谷海岸はこんな状態,リアス式海岸の続く東北において数少ない広々としたビーチで観光客も多かったのに,すべてコンクリートの壁になってしまう。もし自分の海がそうなったら,そう思う富浦さんがしぶとく頑張ってなんとかしようと努力している気持ちはいたいほどわかる,私だったら三浦さんほど落ち着いて出来るだけ平和的にやろうと言う忍耐力は持てないだろう。でもその我慢強さが大切で,みんな反対していてもあまりになにもかわらないので最後には消耗し疲れきってしまいあきらめてしまう。そこが相手側の狙いであり、思うつぼなのだ。
夜は皆とゆっくり火を囲みながらおしゃべり、いつも印象に残るのが,ここに集まる人はみんなそれぞれかなり大変な被災をしたのだが,誰も自分の苦労についてはあまり口にしない、全体的な問題点やコミュニティーがかかえる課題など(それだけでもたくさんある)の話はするが家も船も失ってしまったり,未だに仮設に住んだり,補助金がちゃんとでないとか,住むところがなかなかナイトか,大変なことはいくらでもあるだろうに愚痴らない。東北人の辛抱強さと控えめさをいつも感じる。そして海に関しての意見もとてもフェアで広い視野を持っている。尊敬する人ばかりだ。
でもがんばらせてばかりではいけない、皆のかかえる重荷を少しでも出来る範囲で日本全国で普通に暮らす私達が手助けできたらなあと思う,まずは実情を知り,今何が問題になっているのか知ることだけでも違うと思う。東北に常に心を向けてニュースを探して読むだけでも違うと思う。私もそれくらいしか出来てないけど。
火を囲み,皆で足をくっつけあいながらいろんなことを話した静かな時間だったけれど,皆の思いと気持ちの熱さは充分に感じた。大事なことは何か,損得関係なしで正しい生き方をする、そんなことを考えるいい時間だった。
来て良かった。

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