2011年の冬 数名のサーファーによるパドルでのリアルサイズのピアヒでのパドルインサーフィンを見た時の衝撃は忘れられない。そのとき一緒にいた石垣島のビッグウエイブサーファー カラさんはそれを見たとたん、お腹が痛くなり、誰かが巻かれているのを見てとっさに何秒で海面に上がってきたかちゃんと測っていた。私達とは違い、その波の前にいる姿をリアルに自分に重ねていたから見ているだけでものすごく緊張したんじゃないかな。
それまでにも何年も前から数名のサーファー(特にブラジリアンのグループ、今では彼らはジョーズパドルインの中心的存在でベテランビッグウエイブサーファーだ)がチャレンジはしていたがあのとき、本当にジョーズもパドルで乗れるのだと世界が目を開かされたビッグウエイブパドルサーフィンの夜明けだったように思う。(シェインの2012年のライド、このライドを越えるライドはまだなかったような気がする、とはいえどのライドも鳥肌が立つほどすごかったけど)
それ以来大きなうねりがくるたびに歴史にページが加えられ、歴史に残るライディングが更新されていった。ボードもセイフティーギアも、サポート体制もどんどん発展していき新しい物が生み出されていった。新しい物が生まれる時はいつもものすごいエネルギーがある。その強烈なエネルギーをこのビッグウエイブパドルサーフィンムーブメントからわたしは押しつぶされるほど感じている。トウインが始まった時も、アラスカでヘリスキーが始まった事も同じ感じだった。集まってくるメンバーの共有する思い、結束、そして自然への畏敬、生と死がまじかにあり、自分の持ちうる限りの集中力と体力をその瞬間に発揮させなくてはならないインテンスな経験。人間の可能性とどんなに頑張っても太刀打ちできない自然の力の前で持つ謙虚な気持ち.いろんな事を学ばされ、いろんな事が試される。
サーフィンは、自分さえその用意ができていれば人生に必要なすべての事を教えてくれる。ジョーズでの波乗りはその究極にあり、すべての事が100倍強烈になって向かってくるから学ぶこちら側もその準備がなければ、いっぺんにわからされ、下手したら取り返しのつかない失敗をすることになる。
この2週間のうちに本当にいろんな事があった、わたしはジョーズの波に乗る準備も技術も気力も持ち合わせていない。でも見る事でも多くを学んだし、今までずっとそうやって向かってきた仲間達を30年近く見ている中で多くを学ばさせてもらった。世代が少し変わって来たなかで若手がパイオニアたちがやってきた事を受け継ぎ、さらにより高いところへと持っていき、チャージしているのを見るのは本当に感動的だった。究極の集中力、究極のストークを感じている時の彼らの表情ほど美しい物はない。いろんな瞬間があり、すべての輝きをこのままフェイドアウトさせたくないし、多くの人に伝えたい、そんな気持ちになった。
この動画はフランシスコとニコロのポルチェラブラザーズを中心に編集された物、二人が最高の表情でジェットスキーに乗ってる時の気持ちが想像できる、兄弟でこんな経験を共有できるってどんなに素晴らしい事だろう?
ここのところ雨が続いているが、皆ちょっと息をつき、リチャージできるとほっとしているのではないだろうか、何しろ普通のサーフィンとは消耗度が違うはずだから。
簡単にこの2週間のハイライトを振り返ってみたいと思う。
まず1月半ばからオンショアが落ち着いてきて風がなくなり、波も上がる。
ウエストスウエルが届いて数日はホキパはピアワンなどで楽しい波に乗れていたが、17日からジョーズが割れ、17、19日の週末は今まで見た事もないくらいの人数がラインナップに陣取り、カメラマンも観客もものすごい数でジョーズ祭りといった感じだった。
(50人以上を数えた時間帯もあったこの混雑したラインナップ、考えられない!実際普段いるグレッグロング、シェイン、マウイのローカル達は混みすぎてるから、と入っていなかった)
(ビリー・ケンパーのチューブライド)
初日に印象的だったのはハナ出身のデイジ、それからビリー・ケンパー。多くのすごいライディングがあったが大勢いすぎて誰が誰だかよくわからず混乱した。タカさんが出ようと下におりていった後、20人くらいドドッとおりてい気、ボートからもパドルアウトする人が続々と出てきて、あっという間に50人以上ラインナップに並んでしまった。あんな中あの巨大な波の取り合いをするなんて想像もつかない。
そしてレディースのチャージも感動的だった。
(ひろなり君のチャージ)
日本から来たチャージャーひろなり君のチャージとワイプアウト、その後彼がどこかにいなくなってしまって大騒ぎにもなったが、結果ジェットスキーにすぐ助けられビーチには戻っていて折れた板のかけらを探しにいっていただけだったのだが、何がおこるかわからないこの場所、その上他にも行方不明になっていたサーファーが二つ先の湾で見つかったという話を聞いたところだったのでボードのノーズ部分だけ打上って姿が見えなかった3時間ほどはほんとにわたしやタカさんも最悪の状況が誰にでも起こりうる場所なのだという事を改めて思い知らされた。実は18日もサイズは小さい物のジョーズは割れていたそうでたった4人しかはいっていなかったらしい。その日に入ったサムさんは、最高だったと喜んでいた。
日曜日以降も波はあり、月曜、火曜は小さめでもジョーズが割れ続けた。
(パドルインでもトウインでも代表格のユーリ)
その後10年に一度くらいしか来ないサイズのビッグウエンズデーと言われる巨大なうねりが来て、レアードが来たり、トウインセッション、ポイントブレイク2の撮影など大騒ぎ、ジョーズを見に来る人が止めた車がハイウエイにたくさん止まって何かのコンサート会場のようだった。その次の日もまだ大きく、数人がパドルでチャージ、これも感動した。
これはその木曜日に一番最初にアーロン・ゴールドが乗ったところ、左にいるのはシェイン、アルビー、グランドベイカーだったかな.この日の朝はかなりのサーファーが緊張した面持ちで張りつめた空気が漂っていた。
その次の日24日もサイズダウンしたものの、波は残り、タカさんはピアヒへ。わたしは見に行けなかったけれどタカさん、タカさんの友達、そしてひろなり君が出ていたらしい。その二日間は風が強すぎて無理だったものの、ホキパが最高のコンディションだった。
(カイ・レニー)
その間に記憶に残るライドはたくさんあったけれど、わたしの印象に残っているのはカイがガンとスタンドアップパドルのボードをとっかえひっかえ出てきてはライトの波に乗りレフトの波に乗り、とあちこち動き回ってとても自由に乗っていた事、去年の彼と比べてばいくらい上達している気がした。
ローカルではデイジ、タイラー、そしてアルビーが目立ち、17日の初日にはアルビーがしょっぱなからカッコいいバレルを決め、19日にはショーン・ウオルシュとビリー・ケンパーが素晴らしいチューブライドを見せた。
(一番大きな波の日の一番大きなセットに乗り、その後その一番大きな波に押しつぶされたレアード、彼自身は人のせいには決してしなかったが、トウインをするパートナーがデイブカラマ何ど信用できる人ほど上手でなかったためにワイプアウトが結構あったのだと言う噂を聞いた)
ワイプアウトではレアードが自分がピットブルに食いちぎられる古ぼけた熊のぬいぐるみのようだった、と表現した波がすごかった。というかどのワイプアウトも見てるだけで恐ろしかった。
宮崎のひろなり君は4日間の間に2本板をおり、2回リーシュが取れ、一回行方不明騒動になり、一躍有名に。それでもいいショットが残り、怪我もしていないのだからほんとに彼はラッキーボーイとしかいいようがない。サーフィンがうまいのはもちろんだけれど、あの中にすぐに入っていける根性のすわりようは普通ではない。サーフラインのウエブサイトでもシークエンスでデビュー。でも死んだら終わり、というだけでなく、絶対に死んではいけないので気をつけてね。
(韓国人でオーストラリアに住むサムさん)
(右がサムさん)
サムさんも誰も乗っていないようなシングルフィンのボードを持ち込み、それでかっこ良く乗って、注目を浴びた。が、ドロップインされてその後巻かれた時に足を切ってしまった。
(タカさん、混雑していたので皆のライディングを見ていろいろ勉強しようと思ったらしい。一本乗ってかえろうと思ったらすっかりドロップインされた)
タカさんは多分自分が思ってるようには乗れなかったし、混雑は避けたい方だろうから今回のお祭り騒ぎはちょっと残念だったと思うけどでも絶対助けられたり、人に迷惑をかけないと言う事を大事にしている彼らしく、小さめの波をきちんと乗って帰って来た。ショアブレイクを出たり入ったりするだけでもどんなに恐ろしいところかは、実際にやった人だけしかわからない事だろうと思う。私なんてスープがかぶさってくる岩場を横切るだけでトイレに行きたくなるほど怖かった。
私は一生ジョーズに入る事はカイトでさえもないだろう。実際はいりたいと思った事さえない、ホキパのクローズアウトで充分、スタンドアップだったらピアワンが割れるか割れないかのスモールサイズでも怖いくらいだ。
でもインテンスな状況で波に乗り自然の驚異的なパワーに身を置く様子を見るのはほんとに心が震える思いだ。彼らに自分の気持ちを託し、彼らが感じたり学んだり経験する事を少しでも分けてもらえたらと思う。それくらい魅力、いや魔力の強い場所だと思う。
そんなわけで宗豊君がオアフに戻り、雨がザーザー降ってる今日は何となく一つの区切りがついて、どっと疲れが出て眠くなってきた、自分は波に乗ってもいないのに!そういえばこの2週間毎朝のように3時半頃起きてたから寝不足もあったかもしれないな。
皆がこの雨をほっとする気持ちで迎えているような気がする。私もたまっている仕事をやっつけていかなくちゃ。
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