ここ数日、ビッグウエイブとそれに向かうサーファー達のメンタリティーについていろいろ考えている。自分はびびりやだし大きなのは怖くて仕方がないが、なぜか大波に向かっていく人たちにすごく惹かれる。昔からそうだった。自分なりに大きな自然を前にしたときの言葉に表せないほどの感動や充実感を知っているのであれほどの自然のパワートム来あった時どれだけすごいものが感じられ、見えるのかすごく興味があるのだと思う。
先日のジョーズの写真はいろんなところに出ているが一番上手くまとめられているのはこのエリオットがとって編集したサーフラインのジョーズ特集だと思う。サーファー達の表情や緊張も出ていて臨場感たっぷり。さすが彼らの仲間の一人として一番近くの現場にいつもいる人が作ったものだなあ。
(数日前のジョーズ、大きいのは30分に一回来るか来ないか、このビッグセットは全員が食らったその日一番の大きさ。シェインの板は10フィートちょっとのガンボード、それから考えてこの波の大きさを考えてみればどれだけのものかわかるはず、左の方にピーターメルが必死に潜ろうとしている足が見える)
ジョーズがブレイクした同じ日、オアフではアリゲーターズでサーファーが一人亡くなった。
カーク・パシモア、彼の名前を私は聞いたことがなかったが、有名ではないけれどビッグウエイバーでオアフでは知られている人のようで以前からいろんなビッグウエイブスポットでサーフし、一年半ほど前にノースショアにカリフォルニアから引っ越してきた人らしい。
(右側奥からテイクオフしているのがカーク)
彼のワイプアウトした波はもちろん巨大ではあるけれど、もっと大きな波で巻かれている人を見たことも何度もある。彼が見えなくなった時、回りにいたジェットやサーファー達はすぐにサーチを開始した。折れたサーフボードの先端はあったけれどリーシュがついてるテイル部分はなかなか見つからず、その時ジェットに乗っていたコール・クリスチャンセンがそれを見つけたが、リーシュプラグはぶっ飛んでいてそのボードのテール部分には体は繫がっていなかった。記事を読んだところによると、ビッグウエイブベテランの若手ジェイミー・スターリングは彼が鼓膜を破ってしまったのではないかと考えている。彼も鼓膜を破ったことがあるらしく、鼓膜を破ると完全に平衡感覚が亡くなり、自分の体を自由に動かせなくなるらしい。最後に覚えた彼を見たとき、彼の両足だけ水中に出ていタコとからそう考えているようだ。大きな問題は彼はライフベストをつけていなかったこと。もしもライフベストをつけていたら上半身が浮いて何とかなったかもしれない。でも今更彼のどこが悪かったかなんて分析しても仕方がないし,いくら実力がある人でも運が悪ければ何がおこるかわからないし、死んでもおかしくないリスクはたくさんあるということを改めてたくさんのサーファー達に再確認させる悲しい事故だった。それにしても耳の鼓膜なんてあんな波だったらすぐ破れるだろう、でもそれに対してトレーニングで耳の鼓膜を強化することなんて出来ない、そういうリスクもあるのだということを知っておかなくてはならない。
亡くなったカークに心の底からのご冥福をお祈りいたします.本人だけでなく、その場にいたサーファー、カメラマン、ジェットのサポート、皆どれだけ心が落ちたことだろう。
(トッド・チェサー)
同じ場所でもう20年近く前になるが友人トッド・チェサーも命を落とした。彼は当時ケリーやロブ・マチャド、ロス・ウイリアムズ、マロイブラザーズなどと一緒に、ブラットパックだったかな、若い世代で勢いのあるサーファー達の一人でそのなかでも特にビッグウエイブではリーダー格でチャージしていた。
(これが当時の仲良しグループ、さて何人わかるかな?)
その日はすごく大きな波で彼は実は『インゴッズハンズ』という映画のスタント役でジョーズにくる予定だったのに、仕事のスタントなんてやってる場合ではない、自分の波乗りがしたい、ということで仲間数人を誘ってオアフ島のアウターリーフ、アリゲーターに向かったのだ。大波に巻かれて死ぬというシーンのスタントをぶっちぎって本当に死んでしまったというのは皮肉な話だが、仲間からの信望が厚くアニキとして慕われていた彼の死は本当に多くの人の心に打撃を与え、一緒に海に入った仲間の中にはその後サーフィンをやめてしまった人、うつ病のようになりアルコールに依存するようになった人もいた。トッドが赤ちゃんの頃から一人で育ててきた母親のジニーの悲しみは私達には想像もつかないものだったと思う.彼女自身がガンになったときも『トッドが死んだときのことに比べればなんてことはないし、最悪の場合でもトッドに会うのが速くなるだけだから』と言っていたのを覚えている.それくらいビッグウエイブで命を落とすと人生の最盛期に突然いなくなってしまうので回りの悲しみも大きいのだ。養う家族、守る人がいるならそういうリスクも大きい。
それでもやはりビッグウエイブに惹かれ、追い求める人は多い。そして真のビッグウエイバー達がいかに想定できる数限りないリスクに対して準備とトレーニングをしているかは、知れば知るほど圧倒される。今回のジョーズでトップのビッグウエイブサーファー達のイケイケでない計算され尽くした行動、そして猛チャージにまた多いに勉強させられた.
ローカルアンダーグラウンド、アハヌのエアードロップ、ドロップはメイクしたがこの後スープに押しつぶされなかなか出て来れなかった。2ウエイブホールドダウンの後ライフジャケットのプラグを引っ張り背中のフローテーションで出てきたところを探していた3大のジェットのうちの一台がピックして無事チャンネルへ移動。凄まじい緊張感。
シェインはだんとつ、でもその彼でも語り尽くせないほどいろんなことを計算している.一度ゆっくりいろんな話を聞いてみたいものだ。
若手チャージャータイラー、お父さんはフランス人のミシェルで25年くらい前やっぱりビッグウエイブ好きで知られていた。13歳のときにカズマボードのマットの息子チャッドと組んで40ftのジョーズをトウインで乗って一躍有名になったが、今やパドルセッションでも常連。恐るべきキッズ。今回は見るからに若いというサーファーが3人くらいいた,まだ体格が筋肉質でなくちょっとムチッとしているのだ。
オアフのウオーターマン、マーク・ヒーリーもティーンエイジャーの頃から素潜り、ビッグウエイブに惹かれていた一人、彼もこのセッションは今まで最も大きくヘビーな波でのパドルセッションだったと言っていた。この波に乗るまではびびってなかなかテイクオフできずに時間がすぎていったと言う。でもさすがのライディング。これはエリオットの映像と編集。
この日の様子はいろんなところで出ている。マウイで最も熱心なカメラマンの一人マイク・ニールの写真も素晴らしい。
かなりピークがずれるウネリでどこにポジションするかもとっても難しそうだった。
一緒に波を見ていたタカさんもいろいろ考えているらしく、仕事の合間にテキストで振り返って気づいたこと感じたことなどが送られてくる。私の場合自分なりのスケールでただそれを想像するだけだけど、彼の場合実際にジョーズに出るわけで全く人ごとではないのだ。出るときと帰ってくるときの岩に当たるショアブレイクの破壊力だけでも多いなリスクで当日も『もうジェット無しで出るのはやめようかな』とつぶやいていた。ちなみにこちらはイアンウオルシュがパドルアウトするところ、かれにしてこれだ。
怖いという前にいろんなリスクがあるのだ、家族、怪我をしたら仕事ができない、一本しかないボードを折ったら新しい板は買えないだろうからそのシーズンがふいになる、とか。
とにかくここでビッグウエイブに向かうリスクについて書いていたらとんでもなく長い文章になってしまうので書かないが、想像以上の覚悟とdedication(献身とでもいおうか)を要することは確かでそこに妥協や、怠け、だらけた気持や不純な動機がちょっとでも隙間を作るとそこにリスクが入り込んでくる、だから120%体も精神も環境も準備し、トレーニングしてもうこれ以上はやれることはないというくらいにしておいてもそれでも何か事故が起こる可能性はある、でも確率は低いしそれだけやりきったという潔さ、覚悟は出来る.先日ジョーズに入っていたサーファー達にはそれが感じられる.見ていたときはすごいなというだけだったけれど、後でいろいろ話を聞いたり、ちょっとした行動を振り返ってみて、彼らの波の知識、判断、リスクを出来る限り回避しながらも自分のこれだという波でのチャージはするそのぎりぎりの精神力のすごさがさらにわかってきた。
今回はトップ中のトップ、そしてローカルアンダーグラウンド若手チャージャー数人が出た。普段ラインナップにいるレギュラーのユーリ、マチェロ、カイレニー、アルビーなどは敬遠したのかホノルア普段よりずっと沖のサブマリンで割れる巨大なホノルアをチャージしたようだ、そして何人かはピアワンに向かったようだけどピアワンもパドルではかなり厳しかったようでトウインやっていたみたいだ。
タカさんもこの日は本能が行くなと言っていた気がするけど「入っていたらとんでもないことになっていたかも」と言っていたけど、引く時、やめるときを知ることも実力の一つ、波が小さいときはイケイケでもいいかもしれないけど一つの小さなミスが命に関わるような場所ではそれが実は一番大事なスキルかもしれない。アラスカの山でも以前それをすごく感じた、転ばないこと安全に降りることが一番で、その上で自分のスキルにあわせてプッシュしていく。ビッグウエイブもまったくおなじ。
ちなみに彼らのほとんどはサーフィンだけでなくあらゆるトレーニングをやっている、クロスフィットを取り入れている人は多いけれど、シェインはビッグアイランドのクロスフィットの大会に出て優勝しているようだし、みんなダイビング、呼吸のワークショップなどにも参加して3分間水中で息を止めていられるようになったと去年話していた。やわな体では手足がもがれてしまいそうな波に対抗するには本当に強靭な体と精神を作るために出来る限りの努力をしているし、食べ物も意識していいものを食べている人が多い。不摂生なんて出来ないレベルで準備とトレーニングしてやっとあのラインナップに座っていられるのだろうと思う。
もちろんこんなレベルの話は私には全く関係のない話であの波の10分の一でも乗れないだろう。でもそれなりに自分にとっての限界のサイズに当てはめて考えることは出来る。私だったらスタンドアップなら6ft、カイトなら8−10フィートで安全な居場所がわかるときだけ出て、変なところで巻かれないようにする。巻かれても帰って来れる泳力をつけ、パニックする要素をなくす。スティープなテイクオフにもびびらずに体を前に押し出せる精神力をつける。ショルダークイーンをやめてもう少しピークに陣取れるようにする。自分のレベルをしっかり把握して人がなんといおうとやめる時早める、やる時はやる、やるとなったら完全に躊躇しないでいく。それが精一杯のプッシュかな。そのためには何をすべきか、それを考えればいくらでもやれることが出てくる。そのレベルにおいてもまだ必要な努力を全然仕切れていない。覚悟も献身もまだまだ。やはりほんとにやりたいと思ってる人はどんなときにもそのことが頭から離れていない、仕事しているときも、海以外で遊んでいても、やりたいことを達成するために何をすべきか常に考え実践していると思う。だからその姿勢が素敵に見えるし、尊敬できるんだと思う。そして努力をしたご褒美はきっと想像もつかない価値を持つ。
自分なりの小さなゴールでももう少し本気で取り組もうと彼らのチャージを見て考えさせられた。
まあ、私はまず波より何よりその前に腰や肩の不安要素を完全になくすことが先かな。とにかくまだまだやることはたくさん。一冬怪我のないように少しでも自分の限界をプッシュできるよう、真面目に頑張ろう。
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