日本が誇るべきサーファーの一人田中宗豊君、彼と出会ったのは何年も前のマーシャル諸島への旅、サーフスポットとしてはほとんど知られていなかった未知の島々で素晴らしい仲間と旅が出来たこのときの経験は忘れられないものだけれど、この時初めて宗豊くんと知り合い、彼の人柄の素晴らしさにふれることができた。今彼についてちょこちょこ原稿を書いている。実はちょっと前にオフシーズンでも記事を書かせてもらったのだがその記事が最近発行された号に載っている。
サーフィンを追求していく中で板を削り始め、多くのいい先輩や師匠と出会いながら謙虚な姿勢で学んでいく姿勢は多分今でも変わっていない。日本を代表するビッグウエイブサーファーにも関わらず昨シーズンマウイにやってきたときの謙虚で低姿勢な様子にローカル連中はみんなびっくりしていた。でも大体どんな分野においても本当のマスターってそういうものだ。わたしからしてみれば素晴らしいと言われている人でも態度が高飛車だったらい自慢げだったり傲慢なところが少しでもあればその人はマスターの域に達していない人なんだな、なんて思ってしまう。そのくらい世界のマスター達はみんな謙虚で自然体だ。
宗豊君もある意味海のビギナーみたいな態度でマウイにやってきて、自分が知りたい、関わりたいと思う一番コアのところに入り込み、マウイで信頼されているシェイパー、ビル・フットのところでテント泊、ジョーズボードの最新のデザインを作っているとされるショーンのところで板をオーダーし、混雑を避けながらあまり人とつるまずに自分のペースを作りながら波に乗り、来るか来ないかわからないジョーズの波への準備をしていた。シーズンまっただ中で超多忙のショーンに頼んでいた板はなかなか仕上がらず、波が来そうだと言うのにその日に間に合わないかもしれないと言う焦りもある中ブレイクし始めたジョーズを午後中観察していた日もあった。でもその日に乗れなかったおかげで波を真剣に観察し、いろんなことが事前にわかったことで実際に海に入ったときにそれに対処することが出来たから、意味があったと後で話してくれた。すべてのことに意味があるんだろうな。
海に対して謙虚であり、地道な努力を積むものには必ず海は見合ったご褒美を与えてくれる。結局帰るぎりぎり前に波が上がり、板も前日の夜遅くに仕上がり、ショーンから電話がかかってきたのでいそいで取りにいった。ショーンも翌朝が宗豊君にとっていいコンディションだということがわかっていて、なんとか仕上げてくれたのだ。風は強かったものの、朝ローカルの日本人サーファータカさんと二人でパドルアウトすることが出来た。大き過ぎないサイズで混雑もなくファーストジョーズとしては完璧と言える。
私の小さなカメラではこれくらいしか撮れずにとっても残念だったが最初に乗った一本目の波のときはカメラマンがいなくてこれしかない。セットのいい波をロングライドしてばっちり決めた。
2週間ほどしかいなかった彼だけどすでにマウイでは誰もが喜んで迎えるマウイファミリーの仲間入り。
実は日本を発つ前日に彼から荷物が届いた。前に話してくれていた.私みたいなテケテケでも乗れるサーフボードを削ってくれたのだ。実は私はサーフィンは全然上手でない、人ごみが苦手で混んでいるラインナップにいることが出来ないことが言い訳だが、サーフィンで上手に波乗りができるようになればさらにカイトでもスタンドアップでも上達につながることもよくわかるし、混んでいないところだったら是非やりたいのだが、なかなか勇気が出ない。なんていう話から彼がそれを頭に入れたボードを削ってくれたのだ。自分のために削られたカスタムボードは生まれて初めて.まだそんな立場でもないような気がするが、頂いたからにはまずはパドルから、いやワックスがけからしっかり正しいやり方を学ばなければ!
マウイに無事にもって帰れるようしっかりパッキングがしてあったので梱包は開けずにちょっとだけ覗いてみた。『宗豊削』のサインが重い。彼はお客さんとのコミュニケーションを図りつつその日との思いやニーズにあったものをマシーンシェイプを使わず一本一本フィンまでもすべて自分で削る。今の時代を逆行しているかもしれないが、今の時代が失いつつある大事なものを失いたくないと言う思いがあるのかもしれない。それ派見た目不器用なやり方かもしれない、でも時間と労力をかけてこそ手に入れられるものもある。
最近彼は家族とともに山に入り、農業にも力を入れている、そちらも宗豊シェイプのスタイルと同様昔ながらのやり方で育てたり、昔の道具を使ってみたり、何故わざわざ大変な思いをしてまで、と言う人もいるだろうけど、古い道具を試行錯誤で使ってると年配の農家のおじいさんやおばあさんが嬉しそうに声をかけてくれたりアドバイスをくれたりすると言う。
それに家族とのやり取りを観ていると本当に心身共に健康なファミリーだなと一緒にいる私達までなんだか温かい気持ちになる。
便利になることはいいことで、時間もそれによって有効に使えるようになるはず、なのに昨今私達は便利な機器を使いながらもさらに忙しそうに生きているのは何故なんだろうか?
毎日の日常に追われながらも体を思い切り使う充実感、疲れきって空腹を満たす食事の満足感があるシンプルな生活は素晴らしい。食べるものがあることが家族を守っていくことの第一条件、と考え、安心できる食べ物の確保を考えたときに農業をやる気になったという宗豊君。波乗り、農業、シェイプ、人間関係、家族生活、彼の姿勢はすべてにおいて一貫していて、そこには日本の古き良き義理と人情、信条を貫くサムライ魂のようなものを感じさせる。
一時的に得をすることよりも先々のことを考え、自分だけでなく、自分のまわり、すべてのものにいいこと、正しいと思うことは何か考え、信じる道を進むこと、それが自分の内側から幸せを感じられる行為につながっていく。真にハッピーになるためにはその時は大変でも自分が信じる道を進んでいるという実感を持てることも重要なのかもしれない、そしてそれを理解してくれる家族や仲間に支えられていればなおさらハッピーにもなれ、勇気づけられ、頑張ルエネルギーが生まれる。
彼と彼の家族を観ているとそんなことを感じる。
削っていただいた素晴らしいサーフボードに見合う地道な練習をしなくては笑。Pressure is on.
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