2020-09-12

9月11日 9・11に思うこと。



きてカレンダーを見て9月11日だということに気づきました。あの忌まわしい出来事、そして親友シルキーのことを思い出しました。


19年前の今日、私は朝早くからホキパビーチに向かっていました。私にとっておそらく初めて(だったと思う)の大きなカイトの大会、第一回のレッドブルキングアブザエアーが開催されるということで1ホキパでカイトができるチャンス、数日前から興奮していたくらいで始まるのはお昼頃だけど、朝8時ごろには私も親友でカイト仲間のシルキーもビーチに来て、心の準備をしようとしていたのです。
ビーチに着くと、この時期にしては早いマスト杯くらいの波が割れていて、見るからに風も上がりそうな雰囲気。これは最高のコンディションの中で大会が行われる、自分にはちょっと怖いくらいのコンディションだったけど、(何しろ、2ラインカイトにウエイクボードスタイルの時代ですから)さらに気を引き締めて、緊張と興奮を落ち着けようとしていました。
そんな時隣にいた人が、今日の大会はやらないだろうねえ、と困ったように話しかけるので「なぜ?これ以上のコンディションはないくらいなのに?」と思ったのですが、次に彼の口から出た言葉に私もシルキーもショックで体が震えたのを覚えています。


周りの誰もがNYで起こった信じられない出来事についての話で騒ぎ始めました。こんな中大会もないだろうしやる気にもなれない、と私とシルキーはその素晴らしい波が割れるビーチを後にシルキーの止まっていたアパートに向かい、その小さな部屋で二人で抱き合って泣き続けました。何について泣いているのかわからないけど、なんだかもうたまらなくなり、お互い日本とドイツの家族のことを思いながら泣きました。そして家族の元にいたいけど少なくともお互いがそばにいることが気持ちの支えになるとも感じました。一人っきりであの時間を過ごしていたら本当に心細かったと思います。
テレビのニュースをつけるとどんどん落ち込みそうだったので、何もつけずに二人でぼーっと部屋にいて、ゴロゴロしながらなんでこんなことになっちゃったんだろうと考えていました。こんなことが起こった後、世界も私たちも、元に戻るはずがない、それほどひどい衝撃と悲しみがどっと押し寄せる思いだったけど、20年近く経った今。ほとんどこのことについて思い出すことはありません。それにニューヨークも新しいビルが建ち、人々はみんな忙しく普通に生活しています。
誰もが前に進み、何もなかったように生活しているのです。人間の回復力とはすごい、怖いくらいです。
9月11日が来るとあの悲しい出来事と同時にシルキーのことを思い出します。当時まだ23歳で前の年にカイトでルーキーオブザイヤーに輝いたのに9。11のあった翌年の春にカイトの事故で亡くなってしまいました。
私たちはその年一年一緒にいろんなところを旅し、大会に出て、楽しもうとビッグプランを立ててました。なのに、それが始まらないうちに春にヨーロッパで開催された大会中に亡くなってしまったので、たくさんの思い出を作るつもりだったのに、あんまりないのです。9月11日から1週間ほどはずっと一緒にお互いの心の痛みをシェアした時間だったのでそれがいちばんの思い出に残るシルキーと一緒に過ごした時間になってしまいました。


人が(それが敵であったとしても)あんなことを起こすことを考えることすら未だに理解できませんが、今でもそれと同じくらい、あるいはもっとひどいことが起こったりしています。個人的レベルでも国レベルでも地球レベルでも。人間が根本的に両親の生き物だと私は信じていますが、ほんのちょっとしたことがきっかけでとてつもない悪意や敵意、邪悪な考えを持つこともできるということも知っているつもりです。

9・11のような痛ましい出来事を決して忘れず、そこから必ず学んで次世代を今より良いものにしたい。私たちは意見や考え方が違っても育った環境や文化の違いがあってもお互いに敬意を持って仲良く暮らせるはずです。そういうことを学校で教える最重要事項にしてほしい。だって、いろんな記号や数字が並んだ科目たくさん授業で受けて暗記させられたけど、大きくなってとても役に立ったものはそんなにない。それよりも慈愛や全ての生き物がよりよく生きることができるような行動、生き方を学ぶことの方が、私たちの心も体も健康にしてくれる気がするからです。

9・11の犠牲者そして彼らと親しかった家族や友人に祈りを捧げます、そしてもうあんな思いをする人が増えないように、祈ります。

シルキーのことはたまに思い出します。彼女が今いたらどんな素敵な女性になってたかなと寂しくもあります。
彼女の死はあまりに突然で私にとってもっとの受け入れがたい死の一つでした。ハーネスに彼女の名前を書き込んで、海に出るときは必ず二人ぶん楽しむと心に決めていました。
多分そのミッションはいい感じで達成してる気がしますが、これからも二人ぶん楽しまないとならないので遊びすぎ楽しみすぎだよと人に言われたら、二人分だからと言おうと思います。


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