2016-10-25

10月25日 True champion 

ジョンジョン・フローレンスが年間のワールドチャンピオンに決まった。
わずか4歳くらいでサーフィンを始め、8歳くらいの頃には一人で家の前のパイプラインに出てきて毎日せめぎ合うプロたちの中に入って波乗りしていた彼。

ここ数年彼がワールドチャンピオン有力候補として上りながらなかなか勝てなかった。そしてその理由にみんな、「性格が良すぎる、他の選手のように人を蹴落としてまで勝とうとしてない」などと言われていたが、本当にいつも謙虚でフリーサーフィンも大好きで仲間と一緒にサーフィンを楽しんでいる様子だった。

マウイのローカルたちもジョンジョンのことが大好き、ホノルアでもハーバーでもジョーズでもホキパでもいつも彼が来るとみんなとても快くウエルカムしていたのは彼がガツガツ人の波までとったりするようなタイプではないからなのだろう。

そうはいってもワールドチャンピオンになることは彼子供の頃からの目標だったはずだし、そのために世界中を回ってトレーニングを積んでいるのも確か。

ハワイのトリプルクラウンを勝ち取り、エディーのビッグウエイブコンテストで優勝を決めた今、ワールドチャンピオンだけが課題として残っていた。だから本人もそして周りの誰もがやっと勝ち得たこのタイトルを喜んでいる。

勝利と一口に言ってもいろんなものがある。このジョンジョンのワールドタイトルが決まった途端、ハワイ中の、いや世界中のサーファー、そして友人たちが自分のことのように彼を祝福するコメントや投稿をSNSで発信していた。
ケリーやミックが勝った時とは比べ物にならないくらいの勢いだった。わざわざ自分なりの言葉や説明を添えたものも多かった。
ジョンジョンはリアルなサーファーで、彼の思いや感じ方、そして波へのアプローチに共感するサーファーたちが多いのかもしれない。彼を通じて本来のサーフィンの素晴らしさを再確認し、また今一度自分のサーフィンを見つめている人も多いのかもしれない。裕福な環境でなくてもワールドチャンピオンになれる。子供の頃から誰よりもサーフィンに夢中で続けていたことに純粋なサーフィンを見ているのかもしれない。
理由はそれぞれ違うかもしれないけどどうせ勝つなら人に喜ばれる勝ち方がいい。

せっかく勝ってもみんなから?と感じられるような勝ち方や、あるいは普段からあまり好かれていないとか、リスペクトされない行為を繰り返し、結果的に勝っても誰も喜んでくれなかったら、そんな寂しい勝利はない。
だったら、お前が勝つべきなのに、って仲間から慰められながら負けたほうがいい。私は昔からそう思っていた。

練習もしないで、準備もしないで大会などで勝つことw私は貯金を使うと呼んでいた。たまたま買ったとしてもそれは自分の努力の積み重ねで勝てたのではなく、反対に今まで努力してきたその貯金を使って勝てたのだから貯金を使ってばかりだと借金を作ってしまうし、またトレーニングして貯金をしていかなくてはいつかは大負けをする。

例えば何もしないでたまたま大会に勝っても買ったことで満足し、疑問も持たずにやり過ごしてしまう、だったら負けてなぜ負けたか考え、それを克服するために努力をするほうが実はずっと自分のためになる。
いい波に乗っても普段からマナーが悪かったらラインナップで『またこいつかー」って思われるだけ。でも下手でもしっかり邪魔にならず、なかなか波には乗れてないかもしれないが、上手い人たちのやり方を毎日観察していたサーファーが一本自分の前に来た波に乗れた時、自然と周りは一緒に喜んでくれたり歓声を上げる。
結構見ていないようでみんな周りがやってることを見ているものなのだ。ガツガツ乗っているのを気づかれていないと思っていても、これだけ波にハングリーなサーファーたちがいるラインナップ、言わないだけで気づいていない人なんで絶対いないのだ。
練習や努力なしの大会での勝利、自分勝手に乗りまくる波、共感されない、あるいは応援されない名声や栄誉、どれも得しているようで実は長い目で見ると損だったり、負けだったりする。負けるが勝ち、なんて言うことわざだってあるくらいで、何を勝ちとするなんて人によって違う。

ジョンジョンの勝利は同じワールドチャンピオンという勝利ではあっても(もちろん他のサーファーたちのワールドタイトルだって十分意味があり、みんな努力してきた上でのものだと私は確信してはいるが)それだけにとどまらずハワイに住むみんなを誇らしい思いにさせ、若者たちに希望を与え、仲間たちを喚起させ誇りを持たせた完全なる勝利だった。努力も実力も人格もチャンピオンにふさわしく、文句無しの勝利だった。

イアン・ウオルシュが自分のページに、「今回は誰もが自分が勝ったという気持ちになれる、そんなチャンピオンが生まれた」と書いていた。
いつも本当のマスター、チャンピオンはその道に優れているだけでなく、謙虚で誰に対しても同じように自然体で親しげな態度を変えない。ジョンジョンもまさにマスターの一人だと思う。ある意味子供の頃からマスターになるであろう兆候を見せていたからみんなが注目していたのに違いない。
これからも彼らしいサーフィン勝ちにこだわりすぎない波乗りをしてくれるを見せてくれるに違いない、ジョン・ジョン・フローレンス、私も心からおめでとうという気持ちでいる。

ちなみにコンテストでのサーフィンで知られてはいるけどジョーズでもとんでもなく上手い。一番中のいいオアフの仲間たちとパイゼルのガンボードを持ってやってくるが、あのサイズの波でハイパフォーマンスなサーフィンを見せてくれたのが強烈な印象として残っている、今年も来て欲しいな。

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