2024-11-22

ラハイナレポート#35 ー 近況と私たちができること

 みなさんご無沙汰しております。

日本はきっと今が一番寒い時期なのでは?マウイ島も常夏のハワイとはいえ四季があり、冬は雨が多くなり少し寒くなります。特に今年はエルニーニョだからか、普段吹く貿易風とは反対方向から吹いてくるコナウインドと呼ばれる風が長く続き、大雨や強風がの被害も出ました。この風でラハイナ方面の海は荒れて砂浜が削られ、また雨で土砂や街の瓦礫を通り抜けた雨水が海にたくさん流れ、茶色く濁っています。
前回のレポートでも書きましたが、有毒物質を含む瓦礫も多く、またそれらを一時的に保管している場所も雨が山から海で流れていく道筋となるので(普段は水は流れていませんが谷あいなので雨が降ると流れていく)その土砂が流れていく様子が写真や動画でネットにアップされ、住民の心配も高まっています。

そんななかでも復興作業は日に日に続き、いくつかの家があった場所は綺麗に土地がならされ、平地になっていきました。壊滅的だったラハイナフロントストリートの端っこに位置する、人気レストランMala は営業を再開しました。従業員はほとんどラハイナに住んでいる人たちで家を失った人、家族を失った人も数多く、自分たちがレストランの建物に入るだけで涙が込み上げていた、でもラハイナが元に戻ってほしい、そして昔から愛されていたこのレストランが元のように営業することでその第一歩が踏み出せた思いもある、とインタビューで話していました。
(入り口のところにお客さん宛に、どうか従業員に火事のことで質問しないでください、全員いろんなレベルで大きなダメージを受けました、そのことを毎回思い出さなくて済むよう質問は遠慮してくださいというサインが出ています)

相変わらず一番の大きな課題は住宅問題。そして住むところが見つからず落ち着かない、いつ移動させられるかわからない中ストレスが溜まるなどのことが火事のダメージにさらに上乗せされて精神的に大きなストレスを抱えメンタルヘルスに影響が出てきている人も表面化してきました。この半年近く住民を引っ張って、自分も被災者であるにもかかわらず精力的に支援活動を続けてきた人、どんな時にも不満を言わずアロハに溢れ感謝の言葉と笑顔を他指さないハワイアンなどが、ふと涙を見せたり、落ち込んでうつ状態になっているという話を他のラハイナに住む友人がつらそうに話すのを聞くと、何もできないもどかしさに本当に心が痛みます。

せめてみんなが落ち着いて家に帰るという気持ちになれる住む場所、せめて住んでいた土地に家を建てられる状態になるまで住める仮設住宅などがあれば、少しは違うのではないかとおもいますが、いろんな案が出たり、試されたりしていますが、なかなかこれだという解決案には届かないようです。
短期のバケーションレンタルを一時中止して長期でラハイナの住民に貸すよう促し、それに応えてFEMAに長期で貸せるようにした人の中には普段の賃貸よりはるかに高い家賃をうけとれる人も多いらしく、疑問を持つ人もいれば、それでもまだまだ足りない住宅の数にもっと多くの人がこのプロジェクトに賛同して住宅を提供してほしいという人もいます。

火事以降家賃を上げることは禁止されてるとはいえ、いろんな方法で自然と家賃も物価も上がっていて、ラハイナ方面はほとんど火事以前の倍の値段になっているとも聞きます。ホテル暮らしで落ち着かないのが我慢できず、必死に探して見つけた場所に家族で住もうとしても家賃が5000ドル、そして自分で見つけたところなのでFEMA や赤十字からの家賃の援助なし、それでも背に腹はかえられぬと結局すでに受け取っている保険金を毎月家賃に使っているという人もいます。そんなことでは家を建て直すことができる時が来ても保険金がもう無くなってるかもと心配になりますが、それでも今必要なお金がないのでそれを使うしかない、そんな人たちが今後支援がストップし、家賃はそのまま高いままだったら、否応なしに島から出ていかなくてはならなくなるかもしれません。

そんな心配からKeep Lahaina Land in Lahaina HandsというスローガンともにLahaina Community Land Trust というノンプロフィットの団体もできました。どうしても売らなくてはならない人たちの土地を買取り、ローカルの手から離れないようにしたり、土地を守るための金銭的な支援をしたりする目的です。とくに最近になって、復興の進行を住民ではなく州がイニシアチブを取れるようにする条例案が出てきたりもしていて、不安を持つ人も多いのですが、すぐに多くの住民にこのことを知ってもらい証言を送るよう促したLahaina Strong という住民の団体のおかげで、先日この案は却下されることになりました。住民による住民のための復興を目指すために本当にたくさんの人が動いています。他にも住民が以前よりずっと政府の動きに関心を持って自ら関わり、いい法案を支持したり、意見を言ったりするようになったと思います。大きな資本を持つ会社や政府が住民の気持ちに沿った復興を進めようとしてくれることを心から願っています。

でも心が痛くなるニュースばかりでは決してありません。政府だって本当に大きな課題を抱えながらもいろいろ頑張ろうとしているし、私が個人的に一番恐れていた、地元内での分断(意見の違いにより対立したり、敵意や元に戻らないほどの亀裂が生まれること)にまで至る出来事はありません。意見の違いはもちろんあるけれど、住民の中の団体同士もできる限りリスペクトを持ちながら、協力し合うよう努力しているように見えるし、クプナ(長老)たちに対して若者は大いなるリスペクトを持ち、長老たちは若者たちがコミュニティリーダーとして成長し、率先してラハイナのために動こうとしていることを誇らしく見守っているように見えます。

ペットと暮らす被災者の住むところが見つからないなどペットや動物たちも辛い思いをし、マウイの主要なアニマルレスキュー施設のHumane Society は満席状態で一つのケージに2匹入らなくてはならないような状態。エサも医療費も出すからフォスターファミリー、引き取ってくれる家族を大募集とメディアで声をかけています。そんな中ウエストサイドのオロワル地域で被災した人には無料のペットデイケアサービスを提供する団体が生まれました。また一般にもしつけを含むペットを預かるサービスを提供します。

2月に開催されるアメリカ最大のスポーツイベントスーパーボールにラハイナルナ高校のフットボールチームの代表が招待されました。NFL( アメリカンフットボールの団体)は去年ラハイナルナ高校のフットボールチームに関するショートムービーを作り、それは国中のフットボールファンを感動させました。この特別な体験は選手たちの一生の思い出となり、後に続くチームメンバーたちへも大きな影響を与えることでしょう。その上スーパーボールというフットボールの頂点と言える試合が来週あるのですが、これはどの家でもテレビにかぶりつくほどのお祭りのようなシーズン最後の試合で、コイントスの役目をするためにラハイナルナチームメンバーが招待されました。

ラハイナの緑を取り戻そうという団体もあちこちに木や植物を植えたり、今後更地になった自分の土地に戻れるようになった時には被災者に植える木や植物を寄付してくれるという運動を開始し、ボランティアを長期にわたって募集しています。

マウイの最も大きな建設会社のひとつ、Good Fellows は77日間というスピードでラハイナ地区に新しい幼稚園の施設を建設しました。このように少しずつ建物が修理されたり新しく建てられたりしています。

火事直後からずっと食材などのサポートを続けているHHH(ハングリーヒーローズハワイ)は今でも同じように精力的に支援を続けている団体の一つです。いろんなファームと提携し、食材を被災者への食事を提供してくれる飲食店のところに運んだり、被災者に食材や食事を届けたりしています。

わたしたちができることはそう言ったラハイナ支援を地腹を切ってでもやってくれてきた団体や飲食店が引き続きそれを続けることができるよう援助すること。どこかに外食しようという時はそう言った応援したいというお店や会社を利用する、ローカルビジネスをサポートすることでお金が島の中で循環するよう選択することだと思っています。

もうすぐ8月8日の火事から半年になります。いやがおうにもマウイ島住民全てがいろんなことを感じまた学んできました。学んできたことをしっかり次世代のために活かせるよう真面目に取り組んでいかなくてはなあと思います。


画像1,2,3: ハングリーヒーローズハワイ、火事直後から今までずっと野菜などの食材を配給したり、食事を提供したりする支援活動を続けている。
画像4,5: Lahaina Land Trust ラハイナの住民の手から土地が離れていかないために結成された。
画像6: 瓦礫や有毒物質は集められ、撤去されている。
画像7: ラハイナフロントストリートで真っ先に営業を再開したMALA レストラン
画像8: 雨で流れ出た土がオロワルの海に流れ込む。こんな形で有毒物質が海に流れ、珊瑚礁を破壊することが大いに心配される
画像9: スーパーボールの初めのコイントスという大役のためにラハイナルナのフットボール選手たちが招待されることになった。
画像10: グッド・フェロー・ブラザーズが建築している仮設の学校施設はもうちょっとで完成

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