2024-01-13

ラハイナレポート#15 9月8日 復興へのビジョン

 ラハイナレポート#15 ー 復興へのビジョン


みなさん、おはようございます。
このレポートをアップして皆さんに読んでいただく頃にはマウイ時間の8日になっていて、つまりラハイナの火災から一ヶ月が経ったことになります。あれから一ヶ月しか経ってないとは思えないほどいろんなことが起こって、いろんな変化を通ってきました。

たくさんの大きな問題も見えてきたけれど、「あんなに大変な時期をマウイの住民が一丸となって乗り越え、助け合ってきたのだ」という自信が、「これからさらにさまざまな問題が起こっても、一つになって立ち上がれば全て乗り越えていける」という気持ちにさせてくれます。

避難所はほぼ全て閉鎖され、今のところほとんどの被災者の方がホテルやAirbnbなどを提供され、三週間の期限付きで宿泊できています。一方で三週間はあっという間。期限の切れる10月になった時点で一体どうすればいいのか、まだ1,000世帯ほどが大きな不安を持ちながら過ごしています。

そんな中、いろんな噂(一部はデマ) も飛び交っています。
マウイには米国緊急事態管理庁(FEMA)から4,000人のスタッフが派遣されていますが、議論になったのはその宿泊先です。トップの人たちはマウイで一番いいホテルに(ここはクラ市から一番離れているホテルでもあります)、一般のスタッフも通常一泊1,000ドルのマリオットに宿泊していることが報道されると、疑問の声が多く起こりました。被災者の方は最初のお見舞金として700ドルを受け取っているだけの中、災害時の政府に対するレートがあるとしても一泊1,000ドルも、と不満が多いようです。政府が被災者のためにAirbnbやホテルと提携して、三週間泊まれるようにしたプログラムについても、宿泊先として部屋を提供しているホテルやバケーションレンタルが政府からハイシーズンレート(本来9月は一番観光客が少ないローシーズンの時期)を支払われていることがわかると、これも不満の元となっています。というのも、こうして提供されているバケーションレンタルを少しでも低いレートで住民が住む場所として今後も提供し続けてくれれば、三週間の期限後住む家のない1,000世帯が住む場所ができ、一番重要な住宅問題がクリアできるからです。現時点では、三週間がたった後、被災者に適切な低いレートでこういった部屋を貸し続ける、ということはあまり考えられていないようです。

一方で、タイニーホーム、コンテナやシンプルな作りの仮設住宅の準備も進んでいます。こういった住宅を建設する人材を被災者の中から雇用し、仕事を提供することで支援するような活動もあります。これらは個人の寄付や同じビジョンを持つ会社や団体が進めていてい、支援が多く必要となっています。残念ながら政府が関わっているものではありませんが、すでにいくつかスタートしているので、希望が持てます。それでもまだまだ足りません。

さて、復興の進行状況ですが8月26日に開始されたフェーズ1では、環境保護庁は火災被害物件からの家庭用危険物の撤去と収集に焦点を当てていました。9月5日の時点で、環境保護庁はクラとラハイナの300の施設で危険物の除去を完了しています。陸軍工兵隊が瓦礫を収集して撤去するフェーズ2に移行する前に、マウイ郡の最優先事項は「ラハイナへの帰還」を促進することです。被災地域への帰還についての情報をまとめたマウイ緊急事態管理庁の新しいサイトMaui Recovers で担当のトップは次のように述べています。

「私たちの意図と目標は、住民やビジネスが火災被害にあってしまった自宅や店舗のある地域に一時帰宅し、身の回りの物を持ち帰ったり、保険会社などを同行して保険金請求手続きを行えるようにしたり、自身で被害や損害の評価を行えるように支援することです。また大切な部分で、closure (気持ちの整理や何らかの区切り)を求める人たちにその機会を提供することです。」

ほんの小さな地域ですが今まで入ることのできなかった場所が一部オープンになりました。このサイトでは今後、Return (帰還) 関する最新情報を週1回提供しています。下記のような情報を整理して出してくれるそうです。

■再入域情報: 安全に被災地域に立ち入るための、施設に戻る人のための基本的な安全対策。
■上下水道の状況: 影響を受けた地域の上下水道サービスの状況や復旧に関する定期的な更新。
■マップとデータ: 復旧プロセス中の被災地域での移動やナビゲーションを容易にする対話型のマップとデータ。
■火災の瓦礫撤去: 被災地域から瓦礫や危険物を撤去することに関する最新情報。
■財政および住宅支援: 復興を支援するために利用可能な財政および住宅支援プログラムに関する詳細情報。
■よく寄せられる質問 (FAQ)

MauiRecovers.org は包括的なリソースハブとして機能し、幅広い情報とサポートサービスを提供するためにできたそうなので、今溢れているいろんな情報を被災者の方が整理しやすくなることを願っています。

私たちも情報の整理については考え続けてきました。日本人の被災者の方々にさまざまな情報がいろんなところから来ても大変なのではと思い、大切な情報を集約して一人の人がまとめ、メーリングリストとして希望した方々に送るということを始めました。元新聞記者だったマウイ在住の方が、その経験とスキルを駆使して毎日メーリングリストで日本語の説明付きで情報を送ってくださってます。

街にいると本当にたくさんの被災者の方々が疲れ切った様子で保険会社と打ち合わせ、ID (身分証) の発行、運転免許を取り直す、支援金の申込、などと手続きに追われている光景を毎日見かけます。中には車がないので今日だけレンタカーを借りて街に出て、一気に手続きなどをやってしまおうと思う、とおっしゃる方も。

その間にも復興計画に関するミーティング、証言の場はいろんなところで行われています。政府の見ている復興のビジョンと昔からの住民が描く復興のビジョンが全く違うことがミーティングを重ねているたびに明らかになっていき、それが今の一番の不安となっています。詳しく書くと長くなりますが、

政府側: スマートシティーのモデルプランにのっとったエコロジカルで効率の良い街を作り、気候変動に対応する。(聞こえはいいけれど今まで住んできて住民についてほとんど言及されておらず新しく建てられた家は低価格と謳われていても高価すぎて彼らが住めない可能性が高い)

住民側: 水を取り戻すこと、昔ながらの住民が住みやすい街を取り戻す。焼けてしまった歴史、史跡や文化を残す町に。ハワイのむかしながらの教え、古代の当時システムAhupua'aに従えばエコロジカルでサステイナブルな社会がおのづから出来上がる、というもの。



おそらくどちらの側も、「マウイ島にとって良いだろう」と考えているのだと思います。一方で、島には島なりのやり方があり、アメリカ本土とは違うというのはいつも感じることでもあります。お金やゴリ押しでは動かないハワイアンもたくさんいます。お金で動くような人たちが、自分のことは全く顧みず、困ってる被災者に対して政府でもできないような支援をするでしょうか?ハワイの底力はそこです。アロハ、土地と家族(ハワイという大きな家族という意味でも)への愛のために動く人たちなのです。そして愛があればどんなに素晴らしいことができるのか、この悲惨な状況の中で私は日々目撃、経験させてもらってます。小さな親切が、お金をかけなくても傷ついた人の心を癒すこともたくさん。そして逆にお金があってもそこに気持ちがこもっていなければ、その場で役立つことはあっても本当の癒し、助けにはあまりならないと感じます。

皆さんが寄付してくださったたくさんの支援金をその金額を超えた大きな癒しに変えられるようにするのは現地にいる私たちの責任だと思っています。これからもどう活用していくか活動レポートをみていただき、ご意見、アドバイスなどをいただければ幸いです。

画像1: 水を大切にしたハワイの昔の教えに基づいた古代のエコシステムの絵
画像2-6: 火災の前のラハイナの様子

出典元:
https://www.mauirecovers.org
https://mauinow.com/2023/09/02/epa-workers-finding-many-batteries-during-hazardous-material-cleanup-of-lahaina-burned-area/
https://mauinow.com/2023/08/29/us-army-corps-of-engineers-selected-for-phase-2-of-wildfire-debris-removal-on-maui/






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