1週間ほど前からハワイには来て居た親友のクレーマー、この夏結婚式に呼んでくれて素晴らしい彼女らしい結婚式をアラスカであげたのだが、ご主人とこれまた私たちの親しい仲間、ロブなどと一緒にテレビ番組のAMAZING RACEという番組の新しいバージョンを撮影する政府ティーガイドとしてマウイとビッグアイランドで仕事をしていた。それを全て終えておとといの夜からマウイ入り。
早速うちの泊まれる場所は全ていっぱいだったのでテントを張ってハネムーンスイートを作っておいた。いつも(自宅でも)ほとんどキャンプ生活のようなものだから全く問題なし。
(Bajaに長期で一緒に旅した時も彼女はテントも張らずに外にエアーベッドを置いただけの状態で毎日寝ていた。
(バハのポイントの中でも一番好きだった場所、バハ半島の中間あたりに位置するところ。左に見えるバスに乗って3人で2ヶ月ほどあちこちを旅するのは毎年恒例の楽しみだった)
アラスカに住んでるけど海が大好きで以前は1ヶ月以上ロブの車で3人でバハを旅して居たくらいなのでクレーマーは波の中でも大丈夫。とりあえずティムはインサイドで漕いでてね、と言って私はいそいそと沖の波を目指す。クレーマーもすぐ行くねと言ってたけどなかなか来ないなーと思いながら波に乗って居た。
さて、クレーマーはティムに付き合って一緒にインサイドで漕いでいるのかと思っていたら不意に私の前に漕いできたので、「あれアウトに出てきたの?と声をかけた。ニコニコしながら私よりも沖に向かうのだが、その沖には大きめのセットが来ていた。巻かれるんじゃないかと心配になって「大きなセットが来るけど見てた?」って聞いたら、「見てるだけじゃなくて乗ってるわよー」とクレーマーらしい返事が返って来た。
そして言葉で言ってるだけでなく、めりめり割れそうなセットの波を乗り越え乗り越え、そして一番沖でしょっちゅうドカンドカン巻かれていたけど全く平気でどちらかというと楽しんでいるように見えた。
心配した私が馬鹿だった。クレーマーはどんなところにいてもああいう感じだったっけ。
アラスカ旅行でクレーマーを知ってるかなちゃんも彼女を見て初めてカナハで乗る人とは思えない動きにびっくりしてたけど、でもセットに巻かれる直前の行動(水に飛び込むとか、ぐいぐい進むとか)その時の躊躇がなく、危ないところでの判断力はさすがだねーと言っていた。
どこで何をやらせても周りにエンターテイメントを与えてくれる。
残念ながら近くにいなかったり、巻かれてばかりだったので(インサイドまで戻ってきたりはしてたから乗ってもいたとは思うのだが笑)彼女のライディングショットはゼロ、ごめんクレーマー。
2時間ほど落ちまくって私もこれ以上立っていられないほど疲れ、打ち身の痛みも我慢の限界となり、終了。
私は午後は家で仕事、彼女たちは午後ロードバイクを借りに言って自転車に乗るという。世界にはいくらでもすごい人がいるものだ。
それにしてもものすごく痛いわけではないのでついつい海に出て、また痛くなるから、どうせだったら二日間くらい雨でオンショアで波もないような日が来てくれるといいなあとか勝手なことを考えながらも海に出ずにはいられない。ま、出れてるってことはそこまで痛くないってことかな、と自己弁護したり、別に誰に頼まれてやってるわけでもないのに休めない貧乏性。
海で終始ピークでセットにタコ巻かれしながらもそれ自体を楽しみ、「さすがクレーマー」と私たちを笑わせてくれてた彼女家に帰って来て私に質問をした。
「ねえトモ、リーシュって後ろ足につけないとダメなの?」クレーマー
「うーん後ろ足の方が邪魔にならなくていいとは思うけど絶対ではないし私もカイトの時はアウトに出る時スタンス逆だから前足にリーシュついてる状態になるし、別にいいと思うよ」私
「そっか、なんか巻かれるたびに右足ばっかりものすごい勢いでボードに引っ張られて足が抜けそうになって痛いから、交互に右につけたり左につけたりすれば楽かなあと思って」クレーマー
「。。。。。。」私
「でもさ、クレーマー、足がリーシュで引っ張られすぎて痛いならそんなに引っ張られないように巻かれないような場所にいるとかっていうオプションはないの?」と私、自分でそう聞きながら、彼女にはそれはないんだろうなと思って笑いが止まらない。
彼女もやっとそのことに気づいたというような顔をして二人で大笑い。でも多分リーシュをつけてなくても彼女はあのピークの一番アウトで一番でっかい波を取りたいと思ってそこに向かい、そしてパドル力がないぶん、ちょっとインサイドでスタンバイして結局そのセットに巻かれ、何本もそのあとにくるセットにも巻かれることを繰り返していると思う、人間そう変わるものじゃないし、彼女はスキーでも山でも、パーティーでもどんなことでも(ガイドの仕事をしている時以外は。ガイドの時はお客さんのレベルをしっかり把握して安全面を確保しながらも彼らがドキドキするギリギリのレベルで楽しませてくれる)おんなじ。
一度ゆっくり長いインタビュー記事をまた描きたい人物リストの一人でもある。
I may have low standard of living but I have a very high standard of life.
(生活水準は低いかもしれないけど、人生、生き方の水準はめちゃ高いわよ)
以前日本のフリーライド雑誌FALLLINEで彼女の記事を書いた時の彼女の言葉。自分で立てた小さな小屋とコンテナと改造したスクールバスを活用して移動しながら生活、購入した土地の森の中は水も電気も電話ももちろん携帯の電波もない。冷蔵庫もなし。夏には一年ぶんの魚を取るために魚の血と汁にまみれながらシャケを何十匹も獲り、車や電車に轢かれた、あるいは誰かがとったムースや鹿の肉を分けてもらった時だけ友人が所有している冷凍庫のスペースをレンタルしていてそこに保存している。
一緒にキャンプに行ってもテントすら張らずにシャワーも数週間なくても多分平気。一緒にいると自分が都会のお嬢様のような気分になる程タフでサバイバル力のある彼女。
スターライダーでもなく、スポンサーもつけない(あえてつけないけどクライミングでもスキーでもガイド業でもある程度の人でクレーマーを知らない人はほとんどいないしパタゴニアアンバサダーたちもみんな遠征を一緒にする仲間だけど一つのメーカーに囚われたくないらしい。みんな仲間だから。アンダーグラウンドの頂点、ダードバッグの見本的姿勢を貫いている。それでいて気配りをすごくして女性らしい繊細さもあって詩や絵を書いて、みんなに何かあると送ってくれる。
世界中を旅して世界中の人たちを彼女の魅力で夢中にさせる。なかなか会えないぶん、一緒に居られる時間を大切にしようと思う。
ただし彼女のレベルで一緒に行動すると私は死んじゃいそうなので気をつけよう。笑