「今日のハイライト?特定のライドというよりは今日というその日、そのものがハイライトだった。この日の波、サーファーそれにまつわる全てひっくるめてね。僕の人生で生まれてこのかたあんな波は見たことがないよ。トウインでジョーズに乗っていた時でさえ、あんなにクリーンな状態がずっと続く日はなかったと思う。一日中クリーンでその上セットが来るたびのそのサイズが大きくなっていった。目の前に来た波の何本かはほんとうに目を疑うものだった。昔からああいう波を想像の中で何度も何度もイメージしていたのが現実のものとしてやってきた。シェインと僕は朝マリコゴルチ(ジェとスキーで海に出る場所)に向かう前に、昔のトウインビデオを引っ張り出してみていたんだ。その中に出てくる、今までパドルでは乗られたことのないサイズの波をビジュアライズしてどうやってその波にアプローチしたり、乗ったりラインを取ればいいのかいろいろヒントを得ようとしたんだ。でも海に出てみて、実際にそのサイズの波を見たら、自分の動きが完全に止まってしまった。「OK、この波をよけろ」って本能がいうんだけど、あまりに凄くて体が動かない感じ。
乗られずに割れていったあの幾つかの波のことはうまく言葉には表せないよ。あのエネルギー、パワー、どれだけたくさんの水量がフェイスに吸い込まれ持ち上げられているか、頭の中がトリップしてしまうようだった。本当に凄い日だったよ。
(サーフライン、イアンウオルシュのインタビューより抜粋)
誰の目から見ても明らかなほど今までで一番大きな波にパドルインで乗ったアーロンゴールド、朝から晩までバスが入ってしまいそうに大きなチューブを狙い続けたカイレニー、奥のピークからワイドにつながるセクションを突っ走りチューブに入るリスクの高いビッグウエイブを狙っていたイアンとシェイン、そしてたくさんのローカルチャージャー、誰もが今日はヒーローだった。
でも実は一番のヒーローたちは波に乗っていない。
朝5時前から出動し夕暮れまでカイや他のサーファーたちを見守り、スープから救い出す、ただあの海のなか座ってるだけでも疲れるのに、常に神経を研ぎ澄ませ、何があってもすぐに対応できるように目を光らせる、そしてあの巨大な波の中サーファーを助けに行く。それを自ら望んで毎日かって出る。65歳のビクター。こういう先輩にはどんな若手もかなわない。ちなみに彼はパドルサーファーがいなくなればすぐ隙を狙ってトウインで波に乗ってるし、夏は毎日15キロのダウンウインドを楽しく漕いでいる。
サーファーたちがこのサイズの波に乗れるのもこうやってたくさんのセイフティーがいつ何があっても大丈夫なように見守ってくれていることが大きい、彼らがいなかったらあそこまではチャージできない。
ジョーズのベテラン、ユーリは前回あばらを痛めたので今回サーフすることはできなかった、みんなが自分の夢にまで見た大波に乗ってるのを見ながら自分が乗れないのは辛かったが、自分のできることをしようと。ジェットからできる限りのサポート、セイフティーの役目を果たしたという。あの波にただ乗りたい、で来るだけでは本当はまだ準備は足りないのだ。ローカルたちはみんな優しいし、ルールやマナーさえ守れば(他のサーファーを危険な目に合わせたりドロップしたりしたりしなければ)基本ウエルカムだけれど、ジェットスキーは仲間を見守るためのものであり。これ以上ビジターが増えたり、あまりに大勢の人がラインナップにてクリーンアップセットが来て10人一緒に巻かれたりしたら全員をカバーすることはできない。本来はチームを作ってセイフティー面を確保し、ショアブレイクのような回避できる危険は回避してボートやジェットで沖までやって来るべきなのだという。そうしないと結局はローカルたちのジェットを勝手に頼りにしているということになる。なかなかそこまでできないのもよくわかるが、それでも出来る限りそうしてほしいし、そうすべきだということを認識して欲しいと言っていた。
オアフの若手、コナは肩を脱臼。板はそのまま岸まで直行し、岩にガツンガツンあたり、そのボードは大きな鉄のハンマーで満遍なく叩いて壊したようにしか見えない悲惨な状態だった。
助けられる側もセイフティーが動きやすいように、彼らの動きを察知して動いたり、レスキューしやすい体制を作ったり、コミュニケーションを瞬時に取れるトレーニングを積まなくてはならない。そういうことは波に乗ること以上に大切なジョーズに来るための準備なのだと彼らは言う。ほんとうにそうだと思う。
今日ワイプアウトで首を痛めて背骨を折ったかと心配されたDK。ワイプアウトのインパクトのあと自分の身体のコントロールができなくなっていた時、今まで感じたこともないほどの恐怖を感じたとDKは言う。幸い骨は折れていず、4週間ギブスをするだけで手術はしなくて済むようだ。
DKがワイプアウトしたとき、誰もが一番最初に目にした光景はグレッグ・ロングが彼をしっかり後ろから抱きしめて固定している姿だったという。それを聞いて私も周りにいた人もぐっと溢れてくる熱い気持ちを抑えられなかった。
わすれもしない2年前、コルテスバンクスで、当時(まあ今もだけれど)最も優れたビッグウエイブサーファーとして評価されていたグレッグ・ロングが大きな波に巻かれて死にそうになったとき、ジェットを捨てて海に飛び込みグレッグを抱きしめて一緒に巻かれることで意識を失ったグレッグがこれ以上沈まないようにして助けたのがDKだった。そのままヘリで病院に運ばれたグレッグはあと数秒息を吹き返さなかったら死んでいただろうとお医者さんに言われたそうだ。自分の身の危険を顧みず、ブラザーのためにどんなことでもする。そんな固いつながりがあるからこそ、彼らはあのリスクを持ちながらもチェージできるのだ。
そして呼吸法、ディープウオーターダイブの講習などをみんなで受け、いろんなシチュエーションでのレスキューを海軍や消防署まで行って学んだりしている。
DKはジョーズにはなくてはならない存在。彼と彼の双子の兄ショーンは仲間とスカルベースという、今までのサーフィンにはなかったようなセイフティーチームを作り、サーファーでありながらも必ずピアヒに出るときはみんなが乗るのではなく、交代で乗ってる仲間の安全を見守るジェットメンバーをかならず確保するシステムを作った。そしてチームや仲間のメンバーだけでなく、この数年本当に何人の命や危機を救ったことか。ピアヒで誰よりもリスペクトされ、感謝されているのはスカルベースだろう。
彼らがいるからイケイケでつっこめる、というのではない。が、彼らの存在あってこそのここ数年のパドルでのジョーズの目覚しい発展があるのはたしか。
セイフティーたちは雑誌にも出ないし、名前を知られることもほとんどない。でも一番の英雄で、誰もが認めるこのハードな波の場所でまだ死者が出ていないことを誇りにしている。そして海にいるサーファー、周りの親しい者は誰もが彼らのことを一番の英雄だと思っている。
Thank you Skullbase crew and all the other guys who is lifeguarding out there for the surfers. You guys are the true biggest heroes!
No comments:
Post a Comment