2014-08-07

8月7日 水島 My view (海のはじっこから見た感動と興奮のドラマ)

(注:長い文です)
(今回この日本が誇れるポイントに入ったメンバー,左から宮崎のひろなり君、カメラマンの大倉サン、気サーフボードの櫛本さん、黒潮の漁師でこの場所を30年も見つめ続けたビッグウエイブサーファー淳二サンと豊和サン。ハワイからかえってきてすぐにここに飛んできた逗子出身の藤村篤くん、櫛本さんに頼んで連れてきてもらった徳島のマオくん、足摺のすむ浩平くん、パタゴニアサーフ部門の営業担当森けん、素晴らしい人たちと特別な時間を共有できて嬉しかった!ここに来れた事に感謝!)
昨日の興奮覚めないまま朝を迎える。
昨日よりは確実に大きそう。風がオフショアになり,フェイスがクリーンになった。ただし,この風がどんどん強くなる予報、オフショアがきつい中のビッグウエイブもまた結構きつい。
(道を歩くお遍路さんが四国にいるんだと実感させる)
森けんいわく、昨日一回来たクリーンナップセットはさらに大きかったとか。
こういう波は見ているだけで厭きないし,学ぶ事はたくさん,インサイドのカレンとの早さとか,チャンネルの様子とか,セット感覚、ピークのシフトの仕方など。
だんだん皆集まってきて,出る事になった。この場所は一人で勝手に出て行ける場所ではなく,一人で出て行って、もしリーシュでも切れたらアウト。いろんなリスクを考えて出るかどうかを判断しなくては行けない。実際去年これと同じくらいの波が立ったとき,おそらく皆でたい気持ちはあっただろうけどジェットの調子が悪く、その日は皆出ないという結論を出してセッションをキャンセル事もあったと聞いている。確かに勇気ある撤退も大事,Ride for tomorrow, never ride like there is no tomorrowの教えの通りだ。
淳二サンの指示をうけて皆が動いてジェットをおろす。
宗とよくんが言っていた。『これから乗りたいと思うサイズの波に乗るには今までのやり方から一気に大きなジャンプアップをしないとそれが可能にならない,ただ波乗りのスキルをあげるというのではなく,いろんなリスクを取り除くための準備が大変になる。自分のスキル、体力,海の知識,そして板の開発はもちろんの事だけれど、ジェットスキーでレスキュー体勢を整える、信頼できるパートナーを作る、そしておたがいのレスキュー時のスキルをトレーニングする。なかなか来ないその波が来たとき,それを逃さないようなライフスタイルを築く。そうなると,金銭的にも時間的にも大変な努力が必要だ,でもだからと言ってそこをスキップしてはならない。最近僕が波に乗る時間が少ないという人もいますが,海に入って波に乗るだけが僕の乗りたい波への準備ではないんです。農業をやり,家族を養える環境を作りながらも大事な日には海に出て行く事の出来る自分のライフスタイルを確立し,またジェットを買うお金を貯めてその波が来た時に出来るだけの安全を確保して出て行く事が出来る,その環境が出来てから波に乗るべきだと思うとなかなか海にいけない。でも自分の理想の道へと向かっている途上ではあるから、地道にやってくしかない」
彼の言っていた事の意味はよくわかるし,そこをおろそかにしない宗豊くんはほんとに素晴らしいサーファーだなと心から尊敬している。
そしてここ水島もそういう準備が必要とされる場所の一つだと思う。
(豊和サンがアタッチメントの繫がり方をチェック)
(昨日はスタンドアップジミールイスのガンボード、ボンボラでビッグウウエイブに乗っていた浩平君、今日は宗豊シェイプガンボード11ftで出動)
ここの波に乗りたいと思っている人たちは非公式なクラブメンバーとして、相談しあって,ジェットスキーのメンテナンスフィーとしてある程度のお金をピッチインしているそうだ。ジェットが去年壊れて乗れなかった日からの教訓で良いエンジンを取り付けたそうだ。普通に考えたら結構な金額ではあるがそれでもジェットがいなかったらと考えたらお金の問題ではない。そしてジェットを出そうとしてくれる人がいるだけでもありがたい事だと思う。そうやって皆で協力しあって乗れている場所なのだ。ローカルオンリーというような狭い考えはいっさいないけれど、勝手に入られて何か事故を起こしたら大変だと言う気持ちはよくわかる。岸から見ただけではあのパワーと大きさはたぶん目の肥えた人でなければ分からないだろう。地元の漁師さん達の協力を得て漁港をこうやってアクセスに使わせてもらえているのだって,他の場所ではなかなか考えられない。そういう面での気くばりも万全にしていた。
(大倉サンも10年この場所を追い続けているカメラマン。ラインナップのどこでスタンバイすれば良いかなどこの場所の経験値が高い事も,広いラインナップでもちゃんと上手く撮る位置を熟知していてわたしもいろいろ教えてもらった。口承がほとんどのサーフヒストリーだが,彼のような人がこういう歴史に残るような日を記録に残してくれる事はとてもありがたい,貴重な事だと思う。二日ほどこのために本業の仕事を休ませてもらってまでここの良い波を取る事に情熱を注ぐ)

昨日よりは青空で風もオフショアなのできれい。皆がパドルアウト。北風がどんどん強くなって行ったらスタンドアップで出るのは厳しいし,迷惑はかけられないので今日は陸から見る事にして,淳二サンが見ている横で一緒に見学させてもらた。
沖を見ている淳二サンは本当に嬉しそうだった。もちろん自分が乗りたい気持ちでいっぱいだろうけれど,それでもこうやって自分が長い間見つめ続けてきた場所で,思い描いていたような波が割れ、完璧な姿を見せてくれた事,そしてそれに乗ろうとサーファー達が気を引き締めてパドルアウトしてラインアップに陣取ってる様子に感無量という感じだた。それを横で感じる私までジーンと来る。
しばらく皆ラインナップで見ていたけど誰かが一本乗った!!

(望遠バージョン)
『クッシーだ』望遠鏡で見てもてんにしか見えず誰だか分からない私の横で淳二サンが言った。さすが漁師さんは目がいい。
この大きな波の中誰よりも先に櫛本さんがセットの波にテイクオフ。
(photo by 大倉サン。Facebookから拝借。historical ride. 「57歳にしてこの波乗れた!」待ち続け,思い続ければ願いはかなうと言う見本のようなライディング)
『ビッグウエイブは『気』で乗るんだ』と言っていた櫛本さんは自らその『気で乗る』という事を見せてくれた。遥か彼方遠いところで乗ってるのに,ものすごい「気」がこっちにまで届いた。

『セット一本乗って上がってくる』と出る前に言っていた通り,凄い波に一本のってかえってきた櫛本さん。なにかすこんと抜けたような爽快な表情で『イヤー興奮して出て行ったら膝のサポーターつけるの忘れていた、ボトムターンするとき膝が抜けないか,心配だった』と笑っていた。いやいや,ほんとにこんな波そう簡単に乗れるものじゃない。先頭きってこういう波にはどう乗るのかを示してくれた。
長年の同志,淳二サンと櫛本さん,最高の笑顔。

その後他のメンバーも波にテイクオフしていった。白川浩平くん、宮崎のひろなり君、逗子出身の篤くん、それぞれ凄い波から降ったりもしながらも良い波に乗った。まずこれだけの波になるとラインナップを把握する事だけでも困難。マウイのジョーズもピークの奥からウエストピークまではゆうに1マイルくらいあるというとてつもない広さだけれどここもピークは大きく奥のピークでウオールが連なるピークの波が来ると抜けきれないし,きっと凄いカレントもあるだろうから自分がいたい位置をキープするのはとても難しい事だと思う。風は強くなったり弱まってみたりで,心配したほどには上がらず。私もどうしても皆の様子を海から見たい気持ちが収まらなくなってきた。淳二サンに迷惑にならない範囲でチャンネルから見に行っても良いですか?と訊ねると,「ああ、いってくればいい」と快く承諾してくれたので、風が上がらないうちにといそいでパドルアウト,そしてもしも風が上がってきたらすぐにインサイドに移動し,吹き上がっても変えれるという自信がある位置に必ずいるように気をつけながら皆の波乗りを観察した。
皆のいる位置からさらにおき,水平船で割れるこのセットは20フィートくらいあるのだろうか?湾の左にある突端にもとてつもない大きさの三角波がセットで入って来ていた。あそこもみんな寝ラテはいるらしいが,そこはパドルでは岩があって危険なのでトウインだろうなあと話していた。
昨日海で船酔いした少年マオ君だが,それにも負けずに今日も最初からパドルアウト,チャンネルからジーっと皆の様子を見ていた。実際に自分で乗らなくても乗れなくてもきっと得たもの,刺激は大きかったと思う。だって特等席で見れたんだから。


ショルダーにジェットがいるのが見えるだろうか?万が一のときのためにスタンバイしてくれていて,巻かれてインサイドに行ってしまったり,リーシュが切れると来てくれる,それを頼って出るのは良くないけれど,それでもそこにジェットがいるのといないのでメンタルでも支えとなりパフォーマンスが変わる事は確か。

撮影を切り上げる大倉サンを港までシャトルする豊和サン。この距離自分でパドルするのはかなり大変。
こんな光景を見ながら立っているのもままならないくらいうごめく海面とセットの波を横目でチェックしつつ,ウオー,イエーイ,と一人で叫んでいた。
だってほんとに凄いんだもの。
巨大なモンスターの目の奥を覗くサーファー見えるかな?これは篤くん
このあとこの波にテイクオフ(この下シークエンス)
このままずっとインまでロングライドしてそのまま岸へ戻った。マウイにポンとやってきたときも初めてのジョーズで彼は素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたけど,今回も彼の落ち着いたハンドリングはいろんなところで圧倒された。まだまだ行ける,そんな感じだった。
 『でも結構降りましたよ』と本人も言っていたけど人より奥で陣取ってるので凄いテイクオフからのクラッシュも。
 上の写真の0.5秒後

ひろなり君も続いてテイクオフ。下はシークエンス
 素晴らしいロングライドだった。
今の私にはピークに近寄る事すら無謀な波。川のように流れるカレント、沖で割れると地響きのような音がするさらにアウトのリーフブレイク、
ロングパドルで岸に戻ろうとをしていたひろなり君に合流し一緒に漕いでかえってきた。こんなところでまた会うという、お互いの海に対する中毒ぶりを笑いあいながらも、ここに来れた事,そしていやな顔せず迎えてくれたローカルの方々への感謝の気持ちを共有して戻ってきた。感謝とリスペクト,感動とアロハに包まれた海だった。
 また次の波がくるまで。
マスター櫛本さんも大満足。それにしても「気」で乗るビッグウエイブ、まのあたりにさせていただいた。何度も言うようだけど本気でやりたいと思っていなかったら、いろんな事を犠牲にしてでもやろうとしなかったら出来ない。
皆が上がる頃,ジェットを交代して淳二サンがでてきた。この場所に,そしてこの波にどんな形でも関わっていたいという強い気持ちを感じた。乗ろうというサーファーはいないラインナップの波間をジェットで走りながら彼なりにこの海の大きなパワーを感じ彼なりに波乗りをしていたのだと思う。ここ2、3年、腰のトラブルで思うように海に入れなかったり思い切り波に乗れなかった私には彼の気持ちが痛いほど分かるつもりだが、へこたれて落ち込んでいた私とは違い、淳二サンは男らしく,そして乗っているみんなを心から讃え誇らしげだった。自分が実際に乗らずともあれだけ関わる事が出来る,それもひとつの波乗りかなと感じた、それもかなりのビッグウエイブコミットメント。
とにかく今回の旅で淳二サンとお会いし,話を聞かせてもらった事は大きな財産になった。彼の熱い思いやオープンマインドでウエルカムな姿勢にしびれた。心底カッコいいと思える人がここにもいた。

今回一つ残念だったのは徳島の宗豊くんが来れなかった事、彼は去年これと似たようなコンディションのときにここにいた。その時はジェットスキーのエンジントラブルで結局誰も沖にパドルアウトしない事に決定したのだが,その時の様子をあとで電話で知らせてくれたときの彼の興奮ぶりは印象に残っている。
『日本にもありました,ハワイアンサイズの15フィート,それも上の方が割れるっていうんではなく,トップトウーボトムで掘れてチューブ巻くような凄い波が,それも四国に!これは僕のライフワークになります。大きな宿題を頂きました」
と言っていたから絶対に来たかったはずなのだ。残念ながら宍喰はひどい災害にあい、サーフィンどころではない気分だと言っていたし,それがちょっと落ち着いたらこんどは妊娠中の奥様の具合はちょっと不安定になっていたので今回は遠出は控えようと思うと言ってきた。
気になって仕方がなかったはずだが,しっかり家族を優先した。さすが一家の主、立派だと思う。淳二サンも誘っていたらしく,宗豊くんが来れない事を残念がっていた。

セッションが終わったあと電話をかけてみると、気になっていたに違いない、呼び出し音と同時くらいに彼の声が聞こえてきた。来れなかったに詳しい話をするのは逆効果かと悩んだけれど,自分だったら出来る限りの話を聞きたいと思うし,そのセッションに彼がいなかった事が残念だと伝えたかったのだ。
彼は喜んでレポートを聞いてくれ,そしてなかなか割れないこの場所の波についてはどんなインプットでもあるとありがたい,また明日も色々状況聞かせてくれ』と言っていた。
波は待っていればまた来る,そして必ず宗とよくんの前に彼が待ち望んだ水島の波がくる事は分かっている。それがいつなのか分からないけどその場にいてその瞬間を見る事が出来たら嬉しいな。
ピアヒでトウインが始まった頃,海の上では本当に愛に満ちた素晴らしい空気が流れているんだとレアードが説明してくれていた、その場を共有しているもの達の結束やコミットメント,言葉にしなくても分かる感謝の気持ち,とにかくアロハを感じ,波に乗るアドレナリンもあるけどそれと同時にどこか落ち着いた冷静な自分がいる。今日の水島もそんなものを感じた。
大きなうごめく海に一人でいるとき、今の人生ではもしかしたらこの波には乗れないかもしれない,いやたぶん乗れないだろう。でも来世ではここの波に乗れますように,と水島の神様に祈ってかえってきた。実際乗れなくても今日見たビジョンが脳裏にあることでモチベーションは上がり,目指すもの,努力すべき事が八キルする,そんな気がする。

Mahalo Ke Akua
私に多くの事を教え与えてくれる海に感謝。そしてこの経験を共有させてくれた櫛本さん,淳二サン、豊和サン,浩平くん、ローカルの皆さんにも心から感謝
大いなる力に自分をゆだねる,ちっぽけで非力な自分を感じ自然の圧倒的な力を感じる,緊張と興奮と涙と笑い,すべてが最高潮で押し寄せてくるような感覚,生きているという事を思い切り感じる一日だった。

興奮と感動で体がパンパンにふくれあがったような感覚,今すぐにでも自分をより強くより高みにおくための努力を始めたいという衝動。素晴らしいものを見せてもらったし,シェアさせてもらった。いやはや日本のあちこちに凄い人たちがいるものだ。

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