苦しくなるまで食べ続けた感謝祭の翌日、アメリカでは今日はブラックフライデーと呼ばれる一年で一番のお買い得セールがある日。感謝祭が終わるとクリスマスの準備にかかると言うのがアメリカの一般的な家庭のしきたりで、クリスマスというと家族、親戚、友人皆へのプレゼントを買う、そのためのマーケティングとしか思えないこのブラックフライデーにはいろんなお店やブランドが特別セールをするのだが、そのために夜明け前から入り口に並ぶお客さん、そんな動きをあおるかのように朝6時から特別に開店するお店などなんだかすごいことになっている。
でもバレンタインや日本のクリスマスと一緒でさらに購買意欲を駆り立てようとするマーケティングでしかないし,今の私達にはより多くのものを買うことより、いかに買わずに住ませるか、もってるものを長持ちさせ、使い回し、リサイクルするかが問われているのに、こんなものに踊らされてはいけないと思う。
すべてにおいていけないとは言わないし、どうしても必要なものをこのチャンスに買うのはいいとしてもただ安くなるから、じゃあ何か買っとかなくちゃ、と言う気持ちにさせる相手の戦略にのせられないようにしないと。
パタゴニアは2年前のブラックフライデーに、ニューヨークタイムズの1ページまるまる使って広告を出した。
「Don't buy this jacket unless you really need it」
これは何年も前にパタゴニアの会長イヴォンシュイナードが書いたエッセイのタイトルでもある。安いから買おう、と言う前に、本当にこれが必要なものか今一度問いただし、不必要に買うことで環境にダメージを与えることに加担していないか考えてほしいと言うものなのだが、このエッセイははじめパタゴニアのカタログに載せられていて、それを読んだ時私は大きな衝撃を受けたのを覚えている。だって、服を売るために送っているカタログに会長自らそんなことを書いてしまうんだから。でもそれだけにパタゴニアの本気が感じられた。何枚も買わずに住む商品、使い捨てでゴミを増やすのではなく、長持ちする製品を作る本気度だ。それ以来いつも買いたいと言う誘惑に駆られるとき、彼のこの言葉を思い出す.そして大体の場合、買う必要がないことに気づかせてくれるのだ。
ちなみに今年はアウトドアウエアも自分でリペアできるヘビーデューティーなソーイングキットを出したらしい。新しく買うより直して長く使おうというメッセージだ。
もちろんたまにはちょっとしたものを買うことで大いにハッピーになれることもあり、買い物がすべて悪とは思っていないし,反対に一生懸命作っている個人の作品、それが服でもアートでも農作物でもサービスでもそうだが、無駄の少ない人と人との繋がりを強くする買い物を増やせることが出来ればいいなと思う。
もちろんそれが理想であるけれど私だって安いものを買っちゃうし、大手スーパーにもいく。でもそういう意識を常に持つことで選択肢があるときや選択する余裕があるときにはできる限り理想的な消費生活に近づけるよう努力したいなと思っている。
今年のクリスマスはブラックフライデーで買い物せず、出来る限り心を込めて手作りのものをたくさんつくろうと思っている。暇さえあれば好きでいろいろ拾い集めたものがたまっているのだから有効利用しなくては!
ちなみに今年のパタゴニアはこのブラックフライデーにあわせてショートムービーを発表した。マロイ兄弟達が制作したこの作品はパタゴニアのウエアが好きで長く長く着続けて来た人やその製品にまつわるストーリーを集めたもの。私もいくつかのぼろぼろになっても絶対捨てられずに新しいものがあるのにそれを未だに着てしまうほどのお気に入りの製品がある。そしてその服を見るだけでそれを着て過ごした場所、旅の思い出がよみがえってくる。実は服に限らず自分の持ち物すべてとそういう関係を持つことが出来れば、それは最高の幸せじゃないかと思うのだ。
ちょっとだけしか着ずにタンスの肥やしになる服をたくさんもつより何年も何十年も愛着を持って着る服が数枚ある方がずっと素敵。親の代、もっと前の代から受け継いだもの、使い込むほど味が出る靴や家具、何度読み返したかわからない愛読書、持ってる人の個性を映し出し、その人のストーリーを語るようなものたち、そんなものたちに囲まれて生活出来れば最高だなあ。
誕生日を前に自分が本当に必要な物が何かリストアップしてみた。どうしても必要だと思っている物は人それぞれ違うし、他の人に採っては全く無用な物でも私にとってはなくてはならない物もある.それにしても私の所有物のなかで絶対に必要な物と必要でないけどあると居心地がいいとか、ついつい捨てずにいる物の比率は1対6、いやもっとかもしれない。なんでこんな物持ってるんだろうと気がついて笑いたくなった物もあった。
この比率を少しずつでも小さくしていくことで私の人生のなかに不必要な物がしめている部分にスペースが出来ることで新しく一生つき合っていきたい物や素晴らしい経験が入り込んでくれるはずだ。
それが私の誕生日とブラックフライデーに自分に約束したこと。