きっと選手たちはドキドキしているだろうなあと思いながら、まずは自分が乗れるコンディションなら乗ってから応援に行こうとレインズをチェック。絶対に乗れないコンディションではないけれど、トラブったらおしまい。そしてまだ風が絶対的に弱い。これじゃあカイトだって乗れないや、と思うのに、ウインドが何艇か出ている、そしてすでにレインズやレインズの沖に流れ着いてきていた。壊れて流れ着いたギアを取りに来た人に聞くとちょうど一ヒート目が始まったところだというので、今カイトで出るのは危険なのでまずは見に行くことにした。
メンズトライアルからのスタートで、日本人は毎年マウイに通ってくる数少ないプロの一人野口くん、若手の伊東大輝くん、橋本ひろくん、そしてヨシタケくんが出ていた。みんな緊張気味、そりゃあそうだと思う、野口くんは別として多分誰もあんなビッグウエイブで出た経験はないはずだから。これは誰かに勝つ負けるというレベルではなく、とにかく海にやられて大怪我をしないようにしたい、それだけだと思うけど、もしタイミング悪かったら何が起こってもおかしくない、ということもみんな理解しているだろうし、アウトに出る自信、というよりはラッキーで出られますように、という気持ちだったんじゃないかな。
結果も実際にその通りだった。みんなそれぞれの自分の状況を考えながら頑張っていたし、それなりにボロ巻かれしていた。ロックして、それでもう一回挑戦した選手もいた。
後で聞いたらロックした後まだ時間残ってるからアウト出ずに安全なところにいるだけでももう一回出たほうがいいよと言った子は、出たくなかったけど一回目よりさらに勇気を振り絞って再び海に出たようだった。
(野口くん、full on charging!)
大会では、今までできてることだってできなくなるくらい。100%にしておいて精神的な自信をもってしてやっと技が成功する、そのためにみんな練習を重ねるわけで、だから初めて出たコンディションでミラクルが起きるわけがない。でも普段だったらきっと出なかったコンディションに無理矢理とはいえ出たことで見えたことは本当に大きいんじゃないかな。今日巻かれたこと、流されたこと、壊した道具のことなんてどうでもよくて、その経験をどうこれから生かすのか、それが大事。悔しさをエネルギーに恐怖心をモチベーションに置き換えていき、地道に経験と練習を続けることで結果が出なかった人なんて一人も私は知らない。今日海に出たことだけでも拍手を送りたい選手もいれば、海に出てアウトには出られなかったけど自分の出来る範囲で安全に動いた選手、ただ闇雲に突っ込んだだけではない選手にも拍手を送りたい、何より、何年かほとんど日本選手が来ない時期のあったマウイの大会に今回はプロクラスに4人、そして他にもユースやシニア、マスターズとたくさんの選手が来るようになったことが本当に嬉しい。
( new generation 勢いのある若手が出てきてくれて嬉しい)
もう自分はウインドしてないけどでもやはり自分のルーツはウインドだと思っているしウインドでがむしゃらにやってきて、それを一緒にがむしゃらに練習してきた仲間がいたことが今の自分に繋がってると思ってる。だからあの巨大な波を見てへこたれたり、太刀打ちできない、いつになってもあれに乗れる気がしないような気になる気持ちもわかる。私なんて20年以上やり続けても未だに乗れない。でもほんの少しずつ乗れるサイズが大きくなってくるのは確か。そしてそれには経験と地道な練習で慣れること以外方法はない。とにかくビッグウエイブは気持ちが80%だと思う。それは昨日のヒートを見ていても50歳を過ぎてるロビーナッシュをはじめ。40代の私の世代で活躍していたライダー達がかなり頑張っていたのを見てもわかる、やったことがあるから気持ちに躊躇がないのだ。若手も頑張っていたし、勢いがあり、若さならではの華やかなライディングを見せてくれていた、それも嬉しいことだった。全体的な印象で特に感じたのは昨日すでにジョーズで乗っていた選手、トーマスやルーディー、カイ・レニーにとっては今日のこのコンディションも昨日にくらべればなんのことはない、のだろう。気楽にイケイケで乗ってるように見えた。
(カイレニー、アウトに出るときからして、まず気持ちが前に行ってるからかスピードが全然違う)
ライディングがplayfulというか気負いがあまり感じられずどちらかというかイエーイ、行っちゃおうかなーって感じに見えた。とはいえ彼らトップレベルでもタイミング悪くセットが来たら巻かれるし、チャージしている分巻かれるのもハードで随分ロックしていた。
カイ、キースすらロックしているのだし、ほとんどのライダーが何分もあるいは何十分もインサイドのレインズでスタックしていたくらいなのだから。
最後まで見ていたわけではないのだが、私が見ていた中での一番のライディングはジョッシュストーンの一本、ミドルズの沖からつながるいい波をキャッチし、このオンショアっぽいコンディションの中巨大なエアリアルを2回決め、ホキパの丘全体が歓声で沸き返った。
(ショーンエイキン、以前クアウに住んでいていつもママスで乗っていたが今は地元のオレゴンに戻っている)
「オレゴン、フッドリバーから来た途端この波なんて!」と言いながらも大健闘していたいぶし銀ショーン・エイキンのライディングも感動した。同じ世代でずっと大会とかでも一緒だったので嬉しい。
(ケビンプリチャード)
野口くんも頑張った。
彼は4人の子供と奥さんを連れてのマウイ入り、物価も高くレンタカーも宿も高いマウイに毎年来るのは簡単なことじゃないし、だからなかなか日本からも選手が来れない。でもそんな中でなんとか頑張って毎年来るのはやはり通い続けることの大切さを見にしみてわかってるんだと思う。そして日本だけでなく、世界のレベルに触れておかないとすぐにそのレベルと離れてしまうことも。野口くんも頑張った。
それがいい悪いではなく、野口くんはマウイに通うことを自分にとっては大事なことだと思って通ってるんだと思うけど、簡単なことではない、でもそれだけ頑張って通い続けて経験を積んでいることが今回のあの素晴らしいライディングで結果として出た気がするのだ。ヒートは負けてしまったけれど、私から見れば全く負けた感じがしない、だって本当に堂々としたライディングで、それも何本も大きなセットでメイクしたのだから。横にお嬢さんの風香ちゃんもいて一緒にドキドキしながら見ていたけれど、あの赤ちゃんだった風香ちゃんがこうしてお父さんと一緒にフキパではいるほど成長したのも感慨深い。
努力は必ず報われる、それがいつ来るか、どういう形でくるかは予想がつかないときもあるけど。でも今日の野口くんは努力のご褒美をもらえたんだと思う。直に話はできなかったけど、拍手と握手で迎えたかったな。
もう一人印象に残ってるのはジェイクという子供、風香ちゃん曰く、彼は14歳で風香ちゃんと同い年だそうだがプロクラスにも出ていた。
もちろんあんな大きな波は初めてだろう。他の選手がアウトに出て行った後もなんども何度もチキンジャイブを繰り返しインサイドでタイミングを待っていた。もうこのままヒート中ずっとインサイドにいることになるのかなと思いながらも彼のチキンジャイブをする位置が確実で、ロックの方に流されない範囲をしっかりわかっている上での落ち着いた動きなのがよくわかる。おそらく出る前に嫌という程観察したか、誰かに綿密に教わったかに違いない。風もないしジャイブでチンすることもあるのに、チンしても流されない位置をキープしていた。これってすごく大事、安全なエリアにいるようでいてチキンジャイブで沈して流れて一番ロックしやすいところに行っちゃった、という選手も多かったから。おそらく20分はインサイドにいたんじゃないだろうか。もっといたかもしれない、一回か二回レインズの手前で巻かれていたけどなんとかアウトに出ることができた。もうこれだけで彼としては目標達成だろう。そして誰に勝とうとかではなく、ヒート中最後まで波を選び抜き。ヒート終了ギリギリに一本だけ乗って帰ってきた。これも無理をせず安全に、最後はまっすぐそのままビーチに戻ってきた。ヒートのメンバーの中では4位だったかもしれないけどこのコンディションではトップクラスの連中以外は人対人ではなく自分対海、自分がどれだけ海の凄さを受け入れる容量があるかを目の当たりにし、その中で海とやりあうのではなく海のパワーと流れの中に自分もどれだけ溶け込んでハーモニーを噛んでられるかなんだと思う。そういう意味で彼は今彼が置かれるステージ匂いで彼のベストをスマートにこなしたんじゃないかと思うし、彼が帰ってきたとき多くの人が同じように感じていたのだろう、丘からたくさんの拍手が沸き起こっていた。
もう一つ、レクキューのジェットスキーの動きがものすごかった。ライフガードすごいなあ、ホキパの(特にパビリオンの)ライフガードはいつもあまり動きがよくなくだけど威張ってるという印象があるんだけど、今日の動きを見てやっぱりライフガードもやるときはやるんだなあと思っていた。そしたら後で見てみたらジェットスキーのレスキューはライフガードではなく、ジョーズでみんなを見守るスカルベースのメンバーだった。どうりで!こっちのギアをピックした後はこっちで泳いでいる人をレスキューし、それが終わるとマストが折れて乗れない状態のまま沖で浮かんでいる選手をインサイドまで引っ張ってきたりととにかく一日中全く休む暇がなかった。それもものすごい波の中完璧なタイミングでギリギリを動いていた。さすがスカルベース、彼らのように他の人ができないスキルを持つチーム、それもみんなの安全を守る役目を果たしてくれる人にはちゃんと素晴らしい謝礼が出ていることを心から願っている。Thank you Skullbase!
人間は極限の状態に置かれると極限の感情や思いを経験することが多くなる。極限の集中力、恐怖と向き合いその中で自分の力の知識の全てをぶつけても太刀打ちできないくらいの海。悔しさ怖さも最高潮だったと思うけど、その中での達成感、感動も最大級だったはず。見ている私たちの感動も同じこと。
みんなのシャキッとした表情や堂々としたライディング、巨大な波を見てから、もう一度レインズをチェックしたけど、誰もいないし、危険極まりないことは一目瞭然なので出るのはやめておいた。インサイドでチキンジャイブの練習するだけでも出たほうが良いのではないか、という気持ちが無きにしも非ずだったけれど。でもやっぱり何かあったらと思う不安が勝った。
だからこそ、今日出た選手全員に大きな拍手と敬意を送りたい。
カナハは昨日よりずいぶんサイズダウン、思い切りいけるサイズだったし、あれだけ刺激をもらったのでもっとつっこみたい気分だった。日本チームのユースも一生懸命練習していた。みんないい波をばんばんとって上手だった。ユースのヒートも楽しみだな。
自然のパワーをドカンと感じる日はその中にいる自分を知り、謙虚にさせられる。こういうの絶対大事だと思う。
Mahalo Ke Akua.
tomokoさん、いつもありがとー!スカルベースさんのおかげで道具捨てずに戻れました!ウインドの選手だけでなく、彼らの救助、ウォータースポーツレスキューの経験値にも驚くばかりです!やっぱりマウイは凄いところです!!
ReplyDeletetomokoさん、いつもありがとー!スカルベースさんのおかげで道具捨てずに戻れました!ウインドの選手だけでなく、彼らの救助、ウォータースポーツレスキューの経験値にも驚くばかりです!やっぱりマウイは凄いところです!!
ReplyDelete野口くん、こちらこそ感動をありがとう!、風香ちゃんと一緒に見てて、風香ちゃんもお父さんやるなーって尊敬の目で見てたよ。マウイの凄さを理解しつつそれに負けずに毎年挑戦しにくる野口くんファミリーのスタイルこれからも続けてね。
ReplyDeleteスカルベースは本当にすごい、あれをもっとやばいジョーズでやってるからね。ライダー達以上に尊敬してます。