ラハイナレポート#12 ー 住民の力
みなさん、おはようございます。
毎日毎日慌ただしくてレポートも遅れ気味になっていて申し訳ありません。
家が全焼してしまった日本人のファミリーにやっとお見舞金を届けることができました。皆さんの想いをしっかり感じてくださっていると思います。まだ届けられていない方も何人かいらっしゃいますが、すべてを無くしてしまった時一番必要なのはやはりお金。お金がすべてではないけど、されどお金。身一つで焼き出された方々が何の縛りもなく使えるお金をお届けすることは、「なぜその方たちだけに?」と言われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、本当に必要なことだと私たちチームは感じています。みなさんのおかげです。ほんとにありがとうございます。
さてハワイ州知事はマウイの災害発生後のステージとしてフェーズ2、次の段階に入ると発表しました。アメリカ軍が救援に入ることが正式に決定し、これからは一番ひどい被災地での作業、瓦礫などの撤去やクリーンナップ、有毒や危険物質の除去などその分野のプロフェッショナルが投入され、進むようです。
まだまだ行方のわからない方や身元不明のご遺体も多く、DNA検査を含めた身元確認も全力で進められています。一方で今後、生存者の方が発見されることは残念ながら考えにくいと思われます。せめてご遺体や何か家族だとわかるものが何か発見されれば。。何もわからないまま家族の安否を思い続ける方々のことを思うと本当に胸が苦しくなります。
政府がフェーズ2と宣言しましたが、私たち住民側もどこか私たちなりのフェーズ(段階)が変わりつつあるのを感じています。物資も一度にたくさんのものが一箇所に溢れるようなパニックはほぼ解消され、本当に必要なものが必要なところに届けられるシステムが整ってきました。ニーズに関してもそれぞれのことに特化したグループや団体ができ、各自の役割分担もはっきりしてきたように思います。被災地で積極的に動き回り、みんなを指揮しているようなリーダーたちは相変わらず連絡もできないほどの忙しさです。諸々の問題やニーズをまとめて、伝えるべきところに伝えるなど走り回ってくれています。
物資などのニーズがある程度落ち着き、ネットワークもできてきた今、サバイバルモードから次の段階、子供たちのこと、そして土地を守ることに視点が向いてきています。学校が燃えてしまったたくさんのラハイナの子供たちは、離れた地域の学校への転校を勧められています。でも、そこは車で30分以上かかるところ。毎日通うとなると子供も、大人も、本当に大変です。すでにある地域の建物でなんとか緊急の学校的なものを作ることができないか検討されています。マウイではもともと学校の先生も不足しており、教師やアシスタントの募集もされています。ホームスクールなどのオプションも提案されています。私たちも子供たちの教育環境に関してもできれば支援していきたいとリサーチ中です。
いろいろな意味で子供たちが見過ごされることのない社会やコミュニティーは大切だと思っています。デイケアや子供たちのキャンプ、外で思い切り遊んだり、楽しめる場などもたくさんのグループが支援しています。こういった活動は、参加する子供たちだけでなく、被災後の対応に追われ、心身ともに疲れ切っている大人たちにも本当に役立っています。お母さんと赤ちゃんに特化したある団体は、お母さん一人一人とつながり、何が必要かを聞き、物資の集まるセンターまで行くこともままならない彼女たちの滞在先や避難先まで物資を配達するサービスを始めました。
家族や身近ら人を失った悲しみを抱える子どもたちも少なくありません。それぞれの子供にあわせたやり方でカウンセリングやケアをすることを目的に動いている支援団体もあります。子供たちの笑顔はコミュニティー全体を笑顔にしてくれます。本当にありがたい支援だと思います。
さて、政治的なニュースは心が暗くなるようなものが多いのですが、今日はとても良いニュースがありました。先日市長が、緊急事態を考慮して、通常の建設関連の条例に沿わなくても市長の判断で住宅を建てることを許可し、早急に家をたくさん建設できるようにしよう、という議案が提出されました。それを受けてハワイアンのリーダーたち、ラハイナの住民のリーダーたちからは以下のような発信がありました。
「ラハイナを正しく復興させるためには正しい形でスタートすることが必要だ。住むところが足りないとは言えども、ただ単にたくさんの建物をすぐ建てればいいというものではない。また、政府の言うAffordable houses(手頃な価格の住宅)は、一般の市民にとっては全くAffordable (無理なく支払える額)ではない。今回の議案を逆手に取り、元々住んでいた住民が住めないような高級住宅を制限なく次々と建設する機会を不動産開発業者に与えることにもなりかねない。それはとんでもないことだ。住民の意見を尊重した復興を心がけてもらいたい。時間はかかってもちゃんと始めるべきところから始めてほしい」
住民のリーダーたちがこういった考えを発信し、議案を取り下げるための嘆願書を政府に提出してほしいとSNSなどで発信ところ、たった二日の間に大量の手紙が来たのでしょう。その議案は取り下げられ、市長と州知事は住民の気持ちに沿った形で復興を進めるというような声明を出しました。これは住民の勝利です。
火災直後から不動産、法律事務所、建築会社、開発の大資本などのビジネスが集まってきています。今後も見逃してしまうと、ラハイナの昔からの住民の想いを踏みにじるような計画がどんどん勧められていく可能性は高く、水面下で動いているものも含めて、常に動向に気を配っていく必要がありそうです。
私は政治のことはよくわからないし、権力やお金に関係するところが心がつらくなることも多いのであまり関わっていませんが、知ることで動かずにはいられないことも多いです。知らなくてはいけないこともたくさんあります。ハワイがみんなで力を合わせて動かなければ、大資本や住民の意向に反した動きに立ち向かうことはできないので、大事なタイミングですぐに動けるように学んでいかないとと思います。
今回の件では、議案の内容や嘆願書の提出について、具体的にどこが問題でどんな内容の嘆願書を書いて送ってほしいか、わかりやすい発信があったおかげで、大勢の人が初めて政府に意見書を送ったと言っていました。そのおかげで議案が取り下げられました。住民の力です。
ハワイアンリーダーの一人で、若い友人が言っていました。ハワイはハワイアンだけでできているわけではない。何世代もここにいる日系人、中国人、フィリピン人、そしてほとんどの人が多人種のハワイアン。今はとにかく一つになって正しい形でラハイナが蘇るために力を合わせなくてはならない。いろんな不満やストレス、意見の対立もあるだろうけれど、一番大事な目的のために分断を避けることが大事。ハワイの底力は政府もこの二週間で見てきたと思う。私たちが分断してしまうのは、開発側の思うつぼ。アロハで一つになって昔ながらのサステイナブルなハワイの価値観をベースにrebuild (再建) を進めるよう政府に訴えましょう、と。
彼女はビッグウエイブサーファーでフラの踊り手でもあり、ハワイアンカヌーの乗り手でもあります。20年ほど前に一度インタビューしたことがありました。若々しく綺麗だったけどその目の光の強さにはハワイアンとしての誇りと覚悟のようなものが感じられ、記事のタイトルを「Warrior Princess」としたのでした。今まさに彼女はハワイの文化と伝統を守っていこうとする戦士として頑張ってます。すでにプリンセスというよりクイーンの風格がでてきました。彼女をはじめとするハワイアン、そして昔ながらのラハイナを象徴するようなハワイの人たちをずっと応援していきたいと思います。
画像1: いくつかの日本食レストランでは被災者や被災者をホストしている方々への無料ランチ、そしてチャリティーランチ(ランチを買ってもらいその売り上げを寄付)などをボランティアも手伝いながら提供しています。
画像2: 物資センターのボランティアに来てくれてる日本人スタッフ、ビジターの方も。
画像3,4: 子供たちが外で思いきり遊べる時間は、大人たちにとってもやることに集中できる必要な時間になっています。
画像5.6: Tiare LawrenceとArchie Kalepa ハワイアンのリーダーとしてラハイナでリーダーシップを取り頑張ってくれています。
2024-01-13
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