ゴールデンウイークも後半戦、昨日の雨がうそのように晴れわたった朝、これは梵蔵も混むだろうとの予想は当たり、お昼は10時過ぎからひっきりなしに電話が入り、予約もかなりの量、11時半のオープン時にはお客さんが外に並び、3時ごろまで満席が続いたらしい。
腰の痛みは取れたものの、まだ人前にでるほど動きが敏捷でないので上で休んでいたが、動けるのに皆を手伝っていない、仕事をしていない罪悪感があり、店が気になってしょうがない 。
スタッフは4人フル回転でかなりがんばっているようだった。
結局4時ごろまでランチタイムが長引き、休むまもなく夜の仕込み、少しでもできることをして助けたいと思い、夜の部が終わった後の賄い食を作らせてもらうことにした、スタッフは疲労が見えてはいるものの、ハイになったような気持ちでなんとかがんばっていた。ただのおこずかい稼ぎのバイトと思っている人は一人もいない。
みんなそれぞれプロ意識があり、自分の店ではなくとも、自分の店であるかのように、どうしたらお店が良くなるか、どうやったらお客さんが喜んでくれるかを真剣に考えているし、精一杯できることをやっている。
翔平くんのことはそのうちじっくり書きたいと思っているけれど、彼が梵蔵にやってきたタイミングは運命のようなものを感じさせるほど。そして彼ほど自分の今やってることに一生懸命で情熱的で素直に吸収しようとがんばる人は最近見たことがない。
ゴールデンウイークの助っ人として無理やり頼み込んだヨッピーこと佳子ちゃんは接客が天職のような子で、どんなに裏がばたばたでもそれをお客に感じさせない落ち着きのある丁寧な振舞い、気配りのある、それでいててきぱきと動ける。彼女だからこそ、今回ゴールデンウイークがしのげたと私は思っている。そしてスタッフのモチベーションを上げるのもうまい。
生さんはこれから自分の店を出そうと思って、梵蔵でいろいろ覚えようとしているのだが、最初はみんなの勢いに押されてちょっと自信無げだったが、だんだんその雰囲気にもなれてきた。彼はとにかく優しく、みんなの雰囲気を和ませ、絶対にいらいらさせることを言わない。
黙々とがんばって他のスタッフのアシストをしている。
真剣に仕事をしつつ悲壮感もなく、お互いジョークを言い合ったりして笑いも絶えない、一緒にやる人しだいで仕事の楽しさがぐっと変わるというのを実感する。
彼らの真摯な姿勢を見ているだけで私は感動すると同時に、手伝えない孤独感をちょっと感じ、申し訳なさでいっぱいになる。特に今日はできないわけではないくらい調子がいいからなおさらだ。
結局夜も大賑わいで、私も自分でできるペースでお皿洗いなどを手伝わせてもらった。ほんとに猫のても借りたいときの『猫の手』でしかなかったけれど、みんなのてきぱきとした様子、そして お客さんが喜んで帰っていく様子を見ているだけですごくうれしかった。またゴールデンウイーク前には緊張で顔がこわばり、びくびくしながらがんばってたバイトの生さんが私も知らない準備を手伝っていたりとできることが増えて生き生きと動いていたことにあー抜かれた!とも思った、以前は二人でできない同士慰めあっていたのに。
何はともあえ、すべてが終わって私のまかないタイカレーを前にしてボスが一言、
「ホールを殆んど一人で仕切っている佳子、今日は90人相手して誰も文句が出ていないどころか喜んで帰ってくれたと思うよ。
翔平毎日お疲れ、今日は3度目の翔平だし巻きも出せたな(翔平くんは毎晩家に帰ってまでだしまきを練習しながら店で出せるクオリティーを目指して何度も果敢に挑戦しているのだが、今までほんとに数回しかお客様の前には出せていなかった、OKが出たときはうれしかったに違いない)
生、みんなプロとして飲食やってきた連中のなかで一人大変だと思うし、今までは皆に指示されて動くって感じだったのに、今日は自分からいろいろやることを考えて先に動けてた。良くなったな」
そんな感じで一人一人をほめて感謝していた。
皆が同じ気持ちでがんばったからこその一体感、達成感。一緒に乾杯したときの笑顔の晴れ晴れしさはとても一日中ひーひー言いながら働き続けたメンバーの顔とは思えない輝きだった。
ちなみに売り上げのほうも史上最高をマークしたらしく、あとでボスの一平君は、「みんながいなかったらどんなにたくさんのお客さんが来てもこんな金額には到底ならない、こんな売り上げ不可能だと思ってたよ」とつぶやいていた。おいしいお蕎麦があるだけここまでは行かない、この記録は完全にスタッフのおかげだよ、と。
すばらしいチームワークと一人一人のプロ意識.それが大きなうねりになってる。いいチームだなあ。そしてそういう人たちと触れ合うことでどれだけたくさんのインスピレーションを刺激をもらってることか。ほんとに皆に感謝。
早くちゃんと良くなって私もその一生懸命で結束の固いチームに堂々と加わりたい!
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