風は弱まることを知らないかのように夜も轟々と吹いている。無線ラジオで天気予報をチェックするソフィーは北にいたヨットがマストを折り、どうにもならない状態でいるニュースを入手。マジュロも北の方の島々もミリ以上の強風に襲われているらしい。小さいころから海を前にして育ち、ウインド、カイトなどかなり沖まで行くことも多い私だが、外洋での経験はほとんどなく、こういう荒れた海にぽつんと落とされたらどんなに心細いだろうといまさらながら自分のちっぽけさ、無力さを感じた。
そしてパタゴニア、南極、アラスカなど地球上でも最も荒れた(そのうえ凍りつくほど寒い)海を一年中航海しているSAUVAGEの二人と一緒にいるということで心からどんなことがあっても二人といれば大丈夫そうだという安心感があることに感謝した。30ノット吹いてもここはラグーンの中で水は温かく波もない。二人にとってはとってもリラックスした環境に違いない。
さて風が強いので今日こそはカイト。潮が引き始めるのを待っていざ砂州へ出動。デイデイエに万が一のときのレスキュー用に(そしてカメラマンの移動用に)ゴムボートも出してもらい準備を整えた。最初9mノマドをセッテイング。ラグーンの中で撮影。どんどん浅くなっていき、フィンが当たらないくらいの深さのところを探しながら走る感じ。どんどんオーバーになって行き、コントロールするのが難しくなってきたのでいったんカイトを下ろした。
前回マーシャルに来たときはどんなに吹いているときでも8mでいけそうなコンデイションだったので、今回もいらないだろうと7mを持ってこなかった。しかしこの旅に誘ってくれた御礼にソフィーとデイデイエにカイトレッスンをし、その後古いカイトをあげるつもりで6mを持ってきていたからラッキーだった。
その古い6mをはって今度は沖に見えるパッセージ、(島と島の間)を抜けて、島のはじに回り込むようにして割れている波に乗ることにした。パッセージエリアはサメが集まってるところだと聞いていたし、島影になって風がブランケットになっているところがはっきりわかるほどだったので正直言ってかなり緊張していた。海全体が白くなるほどの白波だったのでとにかくスピードを出してブランケットを何とか通り杉並までたどり着けばそこからはインサイドに入りすぎなければ風はいやというほど吹いていた。
6mでフルパワーの状態でまずひとつの島影をやり過ごし、パッセージに近づいた、このまま問題なくいけるかな、と思った瞬間風が弱くなり、やばい、と思ったときに自分の目と鼻の先に黒いフィンが見えた。一瞬からだが凍りつく感覚があったけれど、二つのフィンが一緒に見えた。「ああ!サメじゃなくてイルカだ!」
イルカがいるところにはさめはいないはず、そのときの安心感といったら!
波のところまでたどりついて過ごしずつ奥へ奥へと近づいていった。どれだけ浅いかわからなかったし浅いところで巻かれたらぎざぎざの珊瑚の森を引きずられ、大変なことになるからとにかく会とを落とさないよう、波に巻かれないよう安全なライデイングしかできない。そういう意味で一人だし、初めてのところで乗るときは100%ではなく50から60%くらいのパフォーマンスしか出来ない、が、そういうのを判断力として実力のひとつでもあるのだろう。先週ウインドサーファーたちが映画の撮影できたいたときは、みんなかなりプッシュして板を壊したり怪我をしたり、ドライリーフに乗り上げたりといろいろあったようだ。
が、私は大事な撮影があるわけでもないしとにかく安全にいく、それでも実力がない分危険なのだから。
波はセットで頭くらい、波質はいいがなんせ6mでオーバーのコンデイション、そしてサイドショア。楽しかったけれどもうちょっと大きければもう少し深いところで割れるのでロングライドが出来たかもしれないなあ、と思う。岸からカメラを構えていてくれていたアンドリューは300mのレンズしかもっていなかったので私の姿はほとんど点に用になってしまい、それに波もそれほど大きくないのでいまいちだったらしい。間できるだけのことはやったのでよしとしよう。
又風がブランケットになっているところをひやひやしながら通り抜け、オーバーでパンパンのセールでなんとか砂州に戻ってきた。足が着くエリアでゴムボートが戻ってくるのを待ちながら言ったり来たりしていたとき何か黒い影が見えたのでエイかなと思っていたら、後でみんなが私の周りをサメがうろうろしていたと聞かせてくれた。それも足が着くような浅瀬まで来ていた、と。サメは自分の領域にはいってくるものを警戒したり脅かしたりして自分のテリトリーを守るものらしい。後で聞いてびびったけどとりあえずは無事終了。その後ソフィーとデイデイエに練習用カイトでかいとの操作を教えたりしてからボートに戻って遅いランチ。そのころには私は日焼けとハーネスずれと緊張が取れたのとで、ぐったりつかれきっていた。初めての場所で、自分の判断だけで安全にカイトするのは思いのほか神経を使うものだ。
午後はボーイズは素潜りで魚を捉まえにいった。巨大なシャコガイ(私だったら改定から持ち上げることすら出来ないのではないかと思うほどの大きさ)と何匹ものスキップジャックが収穫。魚をとったらまっすぐボートに戻るのが鉄則らしい、何しろ肴をついて1分もしないうちに必ずサメが近づいてくるらしい。でボートに乗って又ポイント移動してもぐって魚を突くのだが、私にはとてもサメが近くに来るとわかってるような行為をする勇気はないなあ。
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